2020年7月の九州豪雨で、福岡県大牟田市が事前の対策を怠ったために家屋の浸水などの被害を受けたとして、同市三川地区の住民ら70人が5日、市に計5億5440万円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁大牟田支部に起こした。豪雨では同市で高齢者2人が死亡しており、うち1人の遺族も原告に加わった。
訴状によると、大牟田市では20年7月6日、観測史上最大となる日雨量388・5ミリを記録し、同月8日までの間に住宅被害が全壊11棟、床上浸水1341戸、床下浸水713戸に上った。特に三川地区は周囲より標高が2、3メートル低いくぼ地にあり、6日夜には、たまった水を川に排水する市の三川ポンプ場も水没して停止。被害が集中し、2人が自宅で水につかって亡くなった。
原告側は「三川地区では度々、道路冠水などの被害が発生し、住民が17年に市に豪雨対策の強化を求める要望書を提出するなどしていたが、市は抜本的な対策を講じずに放置した」と主張。「被害を予見できたのに適切な避難誘導なども行わず、浸水による精神的被害や財産上の損害などを受けた」としている。
原告団長の原口順至さん(87)は取材に「死亡者の遺族は救助されなかったことを憤り、『思い出したくない』と言いつつ原告に加わった。事前にポンプのかさ上げなどをしておくべきで人災だ」と訴えた。
大牟田市の関好孝市長は「訴状が届いていないためコメントは控える。真摯(しんし)に対応していきたい」とする談話を発表した。市は豪雨災害後、三川ポンプ場に仮設ポンプを増設し、隣接地では新たなポンプ場建設に着工している。【降旗英峰】