ウィシュマさん訴訟、2時間分のカメラ映像上映 衰弱の様子記録

2021年3月、名古屋出入国在留管理局の施設で死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の遺族が国に損害賠償を求めた訴訟の第8回口頭弁論が12日、名古屋地裁であり、6月の前回に続き、収容中の様子を収めた監視カメラ映像が上映された。
国が地裁に提出した約5時間分のうち、死亡当日の映像を含む約2時間分が法廷内のモニターに映し出された。ベッドに横たわったウィシュマさんが苦しそうに声をあげる様子や、次第に職員の呼びかけにも応じなくなり、衰弱していく様子などが映っていた。
妹のポールニマさん(29)は時折、涙をぬぐいながら、原告席で見守った。ウィシュマさんが反応を示さなくなった後、看守ら職員が集まり脈拍を測る場面など約30分間分の映像は、傍聴席から見られるモニターには映さず、裁判官や遺族、代理人らだけが見た。
閉廷後の記者会見でポールニマさんは、亡くなる直前の映像が傍聴席からは見ることができなかったことについて、「大事なポイントで残念。見てもらえれば、入管がいいかげんで、職員に知識がなかったか分かってもらえる」と話した。
弁論に先立ち、遺族と弁護団は同日、当時の局長らを起訴するよう求める意見書を名古屋地検に提出した。
地検は昨年6月、局長ら計13人を不起訴処分としたが、名古屋第1検察審査会は昨年12月、業務上過失致死罪の成否について再検討することが相当として「不起訴不当」と議決。地検が再捜査している。【田中理知】