記録的な大雨で土砂災害や河川氾濫が相次ぎ、これまでに7人の死亡が確認されている九州北部は12日、再び激しい雨に見舞われた。福岡県久留米市は正午すぎ、市内の一部に5段階の警戒レベルで最も高い「緊急安全確保」を発令。片付け作業をしていた住民が慌てて避難するなどした。他の被災地でも、安否不明者の捜索が一時中断した。
九州北部では、梅雨前線に湿った空気が流れ込んだ影響で12日昼前から断続的に激しい雨が降った。久留米市では昼過ぎまでの1時間に38・5ミリの雨を観測。市は土砂災害の危険性が高まっているとして山間部など5762世帯1万3480人に緊急安全確保を出した。
同市田主丸町の大規模な土石流が発生した現場近くに住み、高齢の両親と小学校に避難してきた森田祐司さん(56)は「避難を促す有線放送を聞いて避難した。間近で被害を見ているし、知り合いも被災した。ただでさえ地盤が緩んでいるだろうし、雨が怖い」と表情を曇らせた。気象庁によると、九州北部では13日夕にかけて大気の不安定な状態が続き、局地的に激しい雨が断続的に降る見通し。
2人が死亡し、今も50代男性の安否が不明となっている佐賀県唐津市浜玉町の土砂崩れ現場付近も大雨となり、2次被害を避けて捜索作業が中断を余儀なくされた。土砂崩れで1人が死亡した福岡県添田町では、12日午前7時前に新たに土砂崩れが発生し、28世帯63人が一時孤立した。
一方、久留米市では12日、災害ボランティアの募集が始まった。早ければ13日から清掃や泥出しなどの作業を始める。また、12日に同市を訪れた福岡県の服部誠太郎知事は「県議会とともに激甚災害の指定に向けて、国に対して声を上げていきたい」と述べた。【宗岡敬介、城島勇人、高芝菜穂子】