俳優の綾野剛らへの証人威迫の罪で追起訴された元参院議員のガーシー(東谷義和)被告(51)の保釈請求を12日、東京地裁が却下した。実刑の公算は大きく、裁判中も保釈されずにそのまま実刑判決で服役となって、今後数年間はシャバの空気を吸えない可能性まで出てきた。
先月4日にアラブ首長国連邦(UAE)から事実上の国外退去となり、成田空港で逮捕されたガーシー被告は同月23日に名誉毀損などの罪で起訴され、翌日に証人威迫容疑で再逮捕された。今月10日に追起訴された後に弁護側は保釈請求していたがこの日、東京地裁は認めないと決定した。
「保釈請求が却下された時が一番つらい。ガーシーさんも相当しんどいはず。自分も少なくとも10回は保釈請求を出したが、認められずにストレスで髪の毛の先だけが白くなるブラックジャック状態に陥りました」と話すのは「漫画村」元運営者の星野ロミ氏(31)だ。
星野氏は人気漫画を違法にアップロードした海賊版サイト「漫画村」を運営し、著作権法違反の疑いで2019年9月に逮捕された。星野氏はフィリピンに滞在しており、入国管理局に拘束され、強制送還された。さらに収益を海外口座に隠したとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の疑いで再逮捕された。
星野氏に対して複数の出版社から告訴状が提出され、漫画界や出版界からは「一刻も早く逮捕せよ」と目の敵にされた。ガーシー被告もタレントや政治家の裏側の暴露で、芸能界や政財界を敵に回したことや海外に滞在していた点など重なるところは多い。
その星野氏には一審で懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円の判決が下され、控訴せずに確定した。逮捕されてから保釈請求は却下され続け、裁判中も勾留は続いた。結局、そのまま収監となったため、昨年11月に仮釈放されるまで約3年間、一度もシャバの空気を吸うことはできなかった。
星野氏はガーシー被告も自身と同様の目に遭う可能性があるとみている。裁判所は同被告に逃亡の恐れのほか証人威迫の罪もついたことで、証拠隠滅や告発者側への何らかの接触を試みる可能性があると判断した模様。それだけではなく保釈されると再びSNSやメディアで自身の主張を発信しかねず、それを最も恐れているとみられていることから、勾留は長期に及ぶ可能性が高い。
政治家関係では、鈴木宗男氏が437日勾留され、秋元司元衆院議員は保釈中に証人買収の疑いで再逮捕され、292日間勾留されている。ガーシー被告は今後、再々逮捕の可能性もあり、状況は不透明。ただ少なくとも5つの罪で起訴されたことで、執行猶予は付かずに実刑は免れなさそうだ。
一審判決後に逆転勝訴や刑期の減軽が見込めないと判断すれば、「控訴しない方が早く自由の身になれる」という計算も働いてくる。ガーシー被告も控訴せずに服役となった場合は、帰国してから一度も家族と会えず、外食もできないまま数年間の刑務所生活を送らざるを得ないというワケだ。
星野氏は長期勾留や人質司法がまかり通っている日本の司法制度の現実を問題視し、「ガーシーさんは生きた心地がしていないと思います」と指摘した。