裁判員「100%殺意、判断の難しさ」 3歳に熱湯・死亡で懲役10年

大阪府摂津市で2021年、新村(にいむら)桜利斗(おりと)ちゃん(当時3歳)が全身に熱湯を浴びて死亡した事件で、殺人などの罪に問われた無職、松原拓海被告(25)の裁判員裁判の判決が14日、大阪地裁であった。坂口裕俊裁判長は殺人罪の成立を認めず、傷害致死罪を適用したうえで懲役10年(求刑・懲役18年)を言い渡した。「熱湯をかけて死亡する危険性を被告が間違いなく認識していたと言えるほどの立証がされていない」と判断した。

判決後、裁判員や補充裁判員を務めた男女5人が大阪市内で記者会見し、殺意の有無に関する判断の難しさを語った。
今回の裁判では殺人罪が成立するかどうかが争われ、判決は弁護側の主張通り傷害致死罪にとどまると認定した。裁判員の一人の30代男性は「いろいろなケースを想定したが、100%殺意があったと判断することへの難しさを感じた」と振り返った。
桜利斗ちゃんがやけどを負った状況について、公判で証言に立った医師の見解は「(高温の湯が)偶然かかった」「被告が意図的に浴びせた」と分かれた。裁判員を務めた20代女性は「頭が混乱した。専門家の意見も参考にしつつ、長い時間をかけて検討した」と明かした。
虐待事件が後を絶たない現状について、この女性は「事件になる前にどうにかできなかったのかと感じた。保護者だけでなく、行政や地域住民、私自身ももっとできることはないかと改めて考えさせられた」と語った。【鈴木拓也】