「残酷で理不尽な犯行」も 殺意に「疑問の余地」と否定 3歳児熱湯死判決

大阪府摂津市のマンションで令和3年、新村(にいむら)桜利斗(おりと)ちゃん=当時(3)=が熱湯を浴びて死亡した事件で、桜利斗ちゃんの母親と当時交際し、殺人罪などに問われた無職、松原拓海(たくみ)被告(25)の裁判員裁判の判決公判が14日、大阪地裁で開かれた。坂口裕俊裁判長は「残酷で理不尽」と非難する一方、殺意は認めず、傷害致死罪を適用して懲役10年(求刑懲役18年)を言い渡した。
争点は、死亡する危険性を認識しながら60~75度のシャワーを故意に浴びせたかどうか。判決ではシャワーを浴びせた行為は認定したが、死亡する危険性の認識は否定した。
弁護側は「浴室をサウナ状態にしておしおきしようとしただけ」とシャワーをかけた行為を否定し、偶発的な受傷と主張していた。
判決理由で坂口裁判長は、桜利斗ちゃんのやけどが全身の90%に及んでいた状況から「熱湯がまんべんなく触れる必要がある」と指摘した。偶然、熱湯がかかっても回避行動をとるはずだとして弁護側の主張を退け「意図的にシャワーを浴びせる以外の方法は考えられない」と認定した。
ただ殺意については「60度の湯をかけて人が死ぬとまで考えるかについては疑問の余地がある」と言及。救急隊員が駆け付けた際は桜利斗ちゃんの体に出血や水疱がなく、殺害する動機もうかがわれないことを踏まえ、「深刻な状態と認識しなかった可能性も否定できない」とした。
量刑理由では「高温の湯を執拗(しつよう)にかけ続けた非常に危険な行為。被害者が泣き叫ぶ様子を目の当たりにしながら犯行を続けた」と指弾した。
判決によると、3年8月31日午後、母親の自宅マンションで桜利斗ちゃんに熱湯を浴びせ続けるなどし、熱傷性ショックで死亡させた。同年6月には頭部を3回、クッションで殴って転倒させた。