半世紀以上にわたりツバメの子育てを自宅の納屋で見守っている福岡県みやま市高田町の農家、田中一人(かずと)さん(79)に日本野鳥の会から感謝状が贈られた。
ブドウやコメを作っている田中さん宅の納屋に入ると、天井にたくさんのツバメの巣があった。今年は3月初めから巣作りが始まり、約70個を確認した。これまで計250羽が巣立ったとみられるという。
多くの巣があるのは、田中さんが納屋の出入り口に目の粗いネットを張り、カラスの侵入を防ぎつつ、ツバメは出入りできるようにしているためだ。以前は納屋でブドウの出荷作業をしていたが、今ではツバメにスペースを明け渡したという。
田中家は祖父の代からツバメの子育てを見守ってきた。子どものころからツバメに親しんできた田中さんは、「ツバメは農作物の害虫を食べてくれる。お互い助け合うことが大切で、ツバメの住みやすい自然環境を孫の代まで残したい」と話した。
日本野鳥の会によると、近年は農耕地の減少や洋風家屋が増えて巣が作りにくくなったことなどから、全国的にツバメの子育てできる環境が減少している。田中さんに感謝状を手渡した松富士将和・同会筑後支部長は「表彰を通して、社会にツバメを見守る輪を広げていきたい」と語る。【足立旬子】