強い台風7号は近畿地方を直撃する見通しだ。お盆休みのUターンとなった14日、JR新大阪駅では予定を前倒しする乗客らで混雑した。紀伊半島付近への上陸が見込まれる15日に向け、各地で厳戒態勢が敷かれている。
切符売り場に長蛇の列
「実家で過ごせる貴重な時間だったのに。あと1日いたかった」。14日のJR新大阪駅(大阪市淀川区)。大阪府枚方市に帰省していた会社員の奥村博さん(54)は、切符売り場の列に並んでいた。15日に自宅のある東広島市に戻る予定だったが、急きょ1日繰り上げたという。「購入には1時間ぐらいかかりそう」と疲れた表情を見せた。
新大阪駅では大きな荷物を抱えた人が目立ち、乗車券の日時変更を希望する乗客らであふれた。JR東海によると、午前8時ごろから混雑が始まり、正午過ぎには約100人が切符売り場前で列を作っていた。
横浜市の女性(29)は14、15両日にあるアイドルグループの舞台公演を鑑賞するため、友人と来阪した。台風の影響で15日分の公演が中止となり、14日の鑑賞後に日帰りすることにしたという。女性は「2日間とも楽しみにしていたのに、運がないです」と肩を落とした。
駅構内では、拡声器を持った係員が「ご旅行の変更をご検討ください」などと呼びかけていた。岩手県内の自宅に帰る予定だった岩井雅俊さん(44)は搭乗予定だった飛行機が欠航することになり、新幹線に切り替えた。指定席は既に満席のため自由席に乗るといい、「これからの方が疲れそう」と苦笑いだった。
在来線、運転取りやめ
近畿地方では15日、在来線でも運転取りやめが決まっている。
JR西日本は東海道・山陽線の京都―西明石間で普通列車の運行を通常の半数程度とし、新快速と快速の運転を取りやめる。京都、新大阪から関西空港を結ぶ「はるか」や、和歌山方面に向かう「くろしお」などの特急も運休する。
南海電鉄は南海本線や空港線など5路線の全区間で運休。近鉄大阪線は三重県内の一部で運転を見合わせる。大阪空港を発着する大阪モノレールは正午までに全線で運転を見合わせる。阪神、阪急、京阪は特急などの運転を取りやめるが、普通列車は通常通り運行する予定という。
一方、高速道路でも影響が出る恐れがある。西日本高速道路は和歌山県南部の阪和道の一部や、関空連絡橋で通行止めの可能性があるとしている。【井手千夏、小坂春乃】
1カ月分の降水量上回る恐れ
台風7号は時速10~15キロと、非常にゆっくりとした速度で北上しているのが特徴だ。気象庁によると、大雨の影響が長時間におよび、近畿や東海では総雨量が平年8月の1カ月分の降水量を上回る恐れがある。近畿では15日午後にかけて線状降水帯が発生し、大雨の危険度が急速に高まる可能性もある。
気象庁によると、台風7号は15日早朝に紀伊半島に上陸し、1日かけて近畿を縦断する見込みだ。同日午後6時までの24時間に予想される降水量は多いところで、東海450ミリ▽近畿400ミリ▽中国200ミリ▽四国300ミリ――となっている。
近畿では南部で15日の未明、北部と中部では朝から警報級の大雨となる見通しで、各地で最大風速20~30メートルの強風が吹く恐れもある。
大阪管区気象台は「交通機関が大きく乱れる可能性があり、イベントやレジャーの予定がある場合は、予定を変更するなどし、最新の気象・交通情報に留意してほしい」と呼びかけている。【菅沼舞】