「水が使えない」冠水で悲鳴 佐賀駅も水浸し 九州北部大雨被害広がる

秋雨前線の影響で記録的な大雨となった九州北部は28日、各地で住宅や道路が水につかり、身動きできなくなった車からの通報も相次いだ。佐賀市では1時間に100ミリを超す猛烈な雨が降り、市中心部の広範囲が浸水。JR佐賀駅も冠水するなど市民生活に大きな影響が出ている。
気象庁によると、佐賀市駅前中央では午前4時43分までの1時間に観測史上最大となる110ミリの降水を観測していた。佐賀駅の駅員、実藤裕久さん(36)によると、午前5時ごろにかけて駅構内に浸水し、仕切り板などで防ごうとしたが20センチほど冠水したという。改札前では列車の運行再開を待つ人もおり、実藤さんは「少しでも早く復旧させたい」と話した。
駅構内のベンチに座っていた佐賀市の会社員、千布(ちふ)邦枝さん(54)は「関西方面に旅行に行くため、太ももまで水につかりながらようやく駅にたどりついた。早く出発したい」と疲れた様子で語った。
駅近くのホテルも1階ロビーまで冠水。出張で宿泊していた東京都江東区の会社員、河口里菜さん(28)は「まさかこんなことになるなんて。出張は明日までの予定だが帰れるかどうか分からない」。駅前のレンタカー店も車十数台がナンバープレート付近まで水につかり、従業員の男性(54)が「車はもう使えないだろう。営業再開のめどは立たない」と途方に暮れていた。
佐賀駅近くで膝下まで水につかりながら歩いていた会社員、切鼻大輔さん(38)は「自宅のマンションは断水して飲料水がなく、トイレの水も流れない。7カ月の子供がいて水がなくて困っている。早く水が引いてほしい」と話した。
佐賀県内では約43万人に避難指示が出され、各地に避難所も開設された。唐津市浜玉町の避難所「ひれふりランド」には近くの住民ら約30人が27日夜から避難し、一夜を過ごした。
町内を流れる横田川の氾濫に備え、夫婦で避難してきた内山千秋さん(72)は「車で水しぶきを上げて走ってきた。道中、何もなかったのでホッとしたが、熟睡はできなかった。早くやむと良いのに」と、疲れた様子で窓越しに雨の降る様子を眺めていた。
今年7月にも大雨が降った福岡県久留米市でも被害が相次いだ。同市梅満町では28日午前5時ごろに浸水が始まり、7月の大雨と同じように低地から冠水した。家具製造工場の様子を見に来た男性は「7月の雨で故障した機械を修理したばかり。木材もぬれたら使えない」とため息をついた。
昨年7月の西日本豪雨で自宅が床上浸水し、今年7月の大雨でも床下浸水の被害に遭った女性は「今回も既に床下浸水した。本当に心配です」と早朝から避難所に身を寄せた。【樋口岳大、安部志帆子、原田哲郎】