京アニ被告人質問詳報 (15)裁判員が「全員同罪」論の〝穴〟指摘、青葉被告は絶句

《36人が死亡し32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の第9回公判は25日午後も被告人質問が続き、裁判官や複数の裁判員が質問した》
裁判員「事件起こしたときの心境。『やってやったぞ』という気持ちだったのか、それとも『火をつけてしまった』だったのか」
被告「ぶっちゃけ、やった後とか、やる前も何か考えがあったらできないものなんですね。やけくそという気持ちだったと思います」
裁判員「今の気持ちは」
被告「最初にも言ったが、やはりやり過ぎではなかったかと思う。作品を盗(と)られたからといって、人の命を奪うほどのものなのか…。悩む部分はある」
裁判員「やり過ぎたというのは人数なのか、放火をしたことなのか」
被告「火をつけるということが大勢を巻き込んだので。火をつけるということになるのでは」
《弁護側は冒頭陳述で、被告にとって事件は「人生をもてあそぶ『闇の人物』への反撃だった」と主張。被告人質問では、京アニ大賞の落選は「闇の人物でナンバー2と呼ばれる人」が仕組んだとの持論を繰り返した》
裁判員「(逮捕後に勾留された)大阪拘置所でナンバー2が現れたと話した。なぜナンバー2だと思ったのか」
被告「周りの反応とかを見て。裏社会では有名で、人脈を駆使して影響力がある。周りの対応が変わったので、『いらっしゃる』と判断した」
裁判員「(前科のコンビニ強盗事件で服役した)刑務所で会ったのと同一人物か」
《首をかしげて考え込むようなしぐさを見せる》
被告「確信を持てないが、自分の勘のようなもので判断した」
《裁判員だけでなく、プロの裁判官も「ナンバー2」について聞く》
裁判官「ナンバー2の影響があって小説が落選した(と主張する)。恨みは」
被告「(小説を)落とす理由をいろいろ考えると、まあ分からなくもない。恨んでいるかは分からない」
《被告は平成28年に自身の小説を京アニ大賞に応募。翌年、落選の通知を受けている》
裁判官「(小説を盗用されたと主張しているが)弁護士への相談など合法的な手続きは検討したか」
被告「(過去に)あんまり誰かに何かを言って解決されたことがなかった」
裁判官「被害について考えていたことは」
《被告は犯行手段に関し、平成13年に青森県の消費者金融「武富士弘前支店」でガソリンがまかれて9人が死傷した強盗放火殺人事件を参考にしたと説明していた》
被告「(被害は)それくらいかなと」
裁判官「(自身の小説の)盗用を止めるためには必要だと」
被告「むこうも最終手段を使うだろうし、自分としても最終手段をとらないとと思った」
《京アニ大賞に落選した後、ネタ帳を燃やした。その際の心境を「つっかえ棒がなくなった」と振り返っていた》
裁判官「小説以外に『つっかえ棒』になるような、犯罪を抑止するようなものはなかった」
被告「家族とは縁を切っているし、自分には社会的な立場はない。そういうような立場を得るための小説もだめになったので、最終的に歯止めになるものはなかった」
裁判官「もし被告自身も亡くなった場合、(京アニがパクったとの主張を)誰も知らないまま終わってしまったかもしれない。それは考えたか」
被告「本人たちが分かればいいと思った」
裁判官「京アニへの恨みは今もありますか」
被告「何度となく人に恨みを抱いてきたが、実際に命までとるところまでいくと、そんな軽いものじゃない。もう少し『やってやった』という感情が生まれると思ったが…。悩むことのほうがある」
裁判官「(被害者参加制度に基づいて質問した遺族の中には)涙ながらに質問する人もいた。何か思うことは」
被告「人がいなくなる、この世から存在が消えてなくなるというのはやはりそういうことなんだなと思うところがある」
《小説が盗用されたとの認識に際し、それを知っていたか否かにかかわらず、京アニの社員は「全員同罪」と訴えていた。裁判員がこの主張に対し、鋭く突っ込む》
裁判員「知らないことは罪だと話していたが、従業員の方がそれぞれどんな業務をしていたか(被告は)知ろうとはしなかったのか」
《回答につまった被告。30秒ほど考えた末、消え入りそうな声で答える》
被告「知ろうとしなかったかもしれません」
裁判員「それは罪にはならないのか」
被告「至らなかった。努力が必要だった」
《7回の期日にわたって集中的に実施された被告人質問がいったん終了。次回は証人尋問が行われる》