近畿大学水産研究所(和歌山県)は26日、ニホンウナギの完全養殖に成功したと発表した。ニホンウナギの完全養殖は2010年、国の研究機関が既に成功させているものの、市場流通には至っていない。同大は「飼育コストを下げ、将来的に商品化したい」としている。
ニホンウナギの国内の供給量は00年の約16万トンをピークに減少が続き、現在では3分の1になった。ほぼ全てが天然の稚魚を人工飼育した養殖魚だが、近年では稚魚の漁獲量が減り、価格が高騰した。ニホンウナギは今や、絶滅危惧種でもある。
そこで同大では、稚魚の安定供給を目指して19年から本格的な飼育実験に取り組んでいる。研究所内でウナギを卵から育て、そのウナギから作製した受精卵が今年7月に 孵化 (ふか)し、初めて完全養殖に成功。現在までに体長1・7~3センチの稚魚が600匹近く育っている。
商品化に向けた課題は、飼育コストや生存率の低さという。今後は、早く成長・成熟するための飼育環境やエサの研究を進める。
同研究所では02年にクロマグロの完全養殖に成功、04年に商品化した実績がある。升間 主計 (しゅけい)所長(69)は「ウナギの稚魚を育てるのは非常に難しい技術だが、これまでの経験を生かし、『近大ウナギ』の量産につなげたい」と意気込んでいる。