韓国ソウルの繁華街・ 梨泰院 (イテウォン)でハロウィーンを楽しむ若者ら150人以上が犠牲となった雑踏事故から、29日で1年。留学中に巻き込まれて亡くなった北海道根室市出身の冨川 芽生 (めい)さん(当時26歳)の一周忌の法要が28日、同市内で執り行われた。韓国の友人2人を含む約20人が参列。父・歩さん(61)は、事故再発防止の願いを語った。(石原健治)
法要を終えた歩さんは、家族で函館市に旅行したときの遺影を抱いて、報道陣の取材に応じた。「あっという間の1年だった。最初は悲しくて悲しくて。まだまだやりたいことがたくさんあったはずなのに――」と声を詰まらせた。
法要には韓国の友人や、犠牲者支援団体からもメッセージが寄せられた。「参列した韓国の友人からも、思い出話をたくさん聞かせてもらった。芽生は頑張って生きてきて、多くの皆さんに支えられてきたこともわかりました」
この1年間は歩さんにとって、多くの人から励まされた日々でもあった。
冨川さんは韓国語を学ぼうと昨年6月、ソウルの大学に留学。充実した留学生活のさなかの事故だった。
事故後、韓国の遺族から「韓国に来たときは会いましょう」と何度も連絡があった。昨年11月には、冨川さんの友人の韓国人男性と、フランスからの留学生が根室市を訪れ、事故発生当時の状況を教えてくれた。2人とは今でも頻繁に連絡を取り合っている。
兵庫県明石市で2001年、花火大会の見物客11人が死亡した歩道橋事故で2歳の次男を失った遺族からも連絡を受けた。事故に巻き込まれ生き残った27歳の長男が、梨泰院の事故のテレビ報道を見て心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと聞いた。「犠牲者の家族、友人らは心身共に大きな傷を負っている」と歩さんは語る。
今月17日、駐札幌韓国総領事館の 裴炳洙 (ペビョンス)総領事らが弔問に訪れた。歩さんが「娘の大好きな韓国で二度と事故を繰り返してはならない」と訴えると、総領事は「韓国を愛してくれた芽生さんのことを韓国人は忘れない。しっかり対策を講じる」と応えたという。
「犠牲となった人々の死を無駄にしてほしくない」。歩さんの今の願いだ。