「大阪府の制度あてはめ、乱暴だ」高校全面無償化に近隣府県の私学団体が反発

大阪府が進める高校授業料の完全無償化制度をめぐり、近畿5府県(京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山)の私学団体が7日、「大阪府が授業料を規制することになる」として府に制度見直しを求める申し入れを行った。大阪府は府内の生徒が他府県の私学に通学する際も無償化を適用できるよう、制度への参加を私学側に求めていた。最終的には各校が判断するが、大阪府が打ち出した高校授業料無償化は、どこまで広がるのか。
「各府県で制度違う」
5府県の私学団体の代表は7日、大阪府庁を訪れ、吉村洋文知事あての申し入れ書を提出した。兵庫県私立中学高等学校連合会の摺河(するが)祐彦(まさひこ)理事長(姫路女学院中高校長)は記者会見で「各府県で補助制度の中身や経緯が違う。大阪の制度を当てはめるのは乱暴だ」と述べた。
大阪府は来年度から、府内に住む高校生の授業料を公費負担する完全無償化を順次実施。府内の私学に通う場合、年間授業料63万円までは公費で補助、63万円を超える分については学校側が負担することになっている。
この制度は、行政側が補助上限を定めていることから、帽子をかぶせるとの意味で「キャップ制」と呼ばれ、過度な授業料の値上げを防ぐ意味合いもあるという。
二重行政、不公平も
大阪府は、府内の生徒が他府県の私学に通う場合も同様の制度を適用したいとの意向だが、私学側は「キャップ制で授業料補助に上限を設定することは、各校の建学の精神に基づく多様な教育の芽を摘む」と指摘する。
また、大阪府の補助制度の適用を受けた場合、授業料を引き上げる際に大阪府の承認が必要になることから、「それぞれの府県の認可を受けた教育機関が、授業料の決定に大阪府の承認も必要となれば二重行政だ」と指摘し、再考を求めた。
大阪府とそれ以外の府県の生徒の間で、負担する授業料に差ができることにもなり、「居住地による不公平を生みかねない」との懸念も示した。
最終判断は各校
キャップ制をめぐっては大阪府内の私学も当初は強い懸念を示していたが、大阪府が学校側への助成の増額などを提示、合意した経緯がある。
大阪府に続き、奈良県も高校授業料の無償化を決めたが、補助上限を超える授業料は学校負担ではなく保護者負担となる予定だ。
ただ、私学側にとって、生徒をより多く集めるという観点からは、制度に参加すれば大阪府からの生徒の流入が期待できる側面もある。滋賀県私立中学高等学校連合会の寺田佳司会長(立命館守山中高校長)は「キャップ制にはどの学校も反対している」と前置きした上で「最終的な参加の可否は各校が判断する」と話した。
大阪府の担当者は「大きく制度を変更することはないが、府としての考えを丁寧に説明して理解を求めたい」。今後、各校に個別に意向調査を行い、12月中に制度への参加校を公表するとしている。(木ノ下めぐみ)