「何をわびたのか」宗教学者、旧統一教会の会見を疑問視

「何をおわびしなければならないのか、それがよく分かっていないような印象を強く受けました」。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が7日に開いた記者会見に対し、宗教学者で東京大名誉教授の島薗進さん(74)は首をかしげた。【安藤龍朗】
「指導が行き渡らず……」
政府による解散命令請求後初となる会見。冒頭、田中富広会長は「指導が行き渡らず、つらい思いをしてきた方々に率直におわびしなければならない」と述べた。
指導が行き渡らず……。島薗さんは、こう受け止めた。「『甚大な被害に対する責任は、自分たちが指示した通りに動かない現場の信徒たちにある』と言っているように聞こえました」
田中氏は、こうも言った。「『被害』は(被害内容が)特定されて初めて使われる言葉。私たちの犯罪性については、法廷で議論されることになったので『謝罪』という言葉には距離をとらないといけません」
おわびはするけど、謝罪ではないという。「組織の責任は認めない内容でした。何をおわびしなければならないのか、分かっていないのでは」。島薗さんの疑問はここにある。
会見を開いた教団側の思惑は
ではなぜ、会見を開いたのか。島薗さんは教団側に主に二つの思惑があったとみる。一つは、解散命令が出ないようにすること。もう一つは、国会で検討されている財産保全を可能にする立法措置は「不要」との主張を通すことだ。
「その二つが動機になって、会見ではまず、おわびしました。供託金として最大100億円を準備する意向も示されました。しかし、旧統一教会が問われている『なぜ長期にわたって多くの被害を生んだのか』ということへの説明はありませんでした」
韓国本部の責任に言及なく
政府は、①組織性②悪質性③継続性――を根拠に解散命令を東京地裁に請求した。島園さんは、この3点に対しても教団側が説明責任を果たさなかったと指摘する。
「日本の教団は、韓国にある教団本部と指導者の意思に従って行動しています。一連の問題の責任がどこにあるかといえば、日本よりも韓国の教団本部にあるわけです。しかし、会見では、本部の責任と改革の必要性については触れられませんでした」
田中氏は自身の進退について「改めて役員会で検討させていただく」と言及したが、島薗さんは「日本の教団トップを交代しても、本質的には何も変わりません」。
教団は2009年の「コンプライアンス宣言」以降、改革を進めてきたと会見で強調したが、繰り返されてきた霊感商法や高額献金を巡り、島薗さんの疑念はむしろ深まった。
「なぜ財産の収奪という事態が起きたのか、その責任をどう考えているのか。返金しなければならないような事態を招いているのに、ほとんど説明がありませんでした。問題を自覚していないと考えざるを得ません」