首相ら「給与増額分」返納へ…従来の返納額より増、野党批判や世論の反発踏まえ

法案審議入り

岸田首相や閣僚の給与を増額する国家公務員特別職の給与法改正案を巡り、政府は首相と閣僚ら政務三役の増額分を自主返納する方向で調整に入った。物価高が進む中、野党が批判を強めており、世論の反発も招きかねないと判断した。
改正案は8日の衆院内閣委員会で審議入りした。一般職の国家公務員の給与引き上げに合わせ、会計検査院長や人事院総裁らの給与増額とともに、首相は年間46万円、閣僚は年間32万円増やす内容だ。
松野官房長官は同日の記者会見で、「賃上げの流れを止めないためにも民間に準拠した改定を続けることが適切だ」と強調。行財政改革推進のため、2014年から首相は3割、閣僚は2割の給与の自主返納を申し合わせていることに触れ、首相は年額1218万円返納することになるなどと説明していた。
だが、与党内でも見直し論が高まったことを踏まえ、政府は軌道修正を図ることにした。増額分を追加することで、首相の自主返納額はさらに増えることになる。
公明党の高木陽介政調会長は8日の記者会見で、「国会議員も(賃上げを)凍結する。首相や閣僚も凍結するという考え方があってもいい」と指摘。自民党の高木毅国会対策委員長も8日、立憲民主党の安住淳国対委員長と国会内で会談し、「何らかの対応が必要だ」と言及していた。
一方、立民の泉代表は8日、福島県南会津町で記者団に、「国民の賃上げを優先すべき時に、首相や閣僚からというのはまったく順序が逆だ。国民感覚があれば、法案は取り下げるべき性質のものだ」と述べた。立民は同日、首相や閣僚らの増額を凍結する修正案を国会に提出する方針を決めた。
日本維新の会の遠藤敬国対委員長も8日、自民の西村明宏国対委員長代理と国会内で会談し、首相と閣僚は増額対象から外すよう求めた。