煉獄コロアキこと杉田一明容疑者の逮捕 期待される「私人逮捕系ユーチューバー」への見せしめ効果

ユーチューブに投稿した動画で女性を中傷したとして、警視庁は13日、名誉毀損の疑いで〝私人逮捕系ユーチューバー〟の杉田一明容疑者(40)を逮捕した。杉田容疑者は「煉獄(れんごく)コロアキ」の名前で活動。人気漫画「鬼滅の刃」に登場するキャラクターのコスプレをしていた。この逮捕が〝私人逮捕系ユーチューバー〟への見せしめになるという。
逮捕容疑は9月に東京・帝国劇場周辺で10代女性に対してチケット転売をしていると決めつけ、「パパ活やってるでしょ」などと言いながら動画を撮影、「転売ヤー」などと字幕を付けて投稿し、女性の名誉を傷つけた疑い。警察の調べでは10代女性が不正転売に関わった事実は確認されていないという。
杉田容疑者はライブチケットを高額転売しようとしていると言いがかりをつけて、一般人を取り押さえる動画などをユーチューブに複数投稿していた。コスプレ姿で活動することが多く、4月には東京・武蔵野市議選に出馬して落選するなど話題になることもあった。今月に入り、ユーチューブチャンネルが削除されていた。
昨今、ユーチューブでは私人逮捕系ユーチューバーが急増。転売ヤーだけでなく、痴漢や盗撮をしたとして男性を捕まえる動画もあり、再生回数も多かった。こうした動画には賛否が寄せられ、問題視されていた最中の逮捕となった。
元警察関係者は「今回、名誉毀損容疑で逮捕となったら、私人逮捕動画をアップすることがダメと周知できます。ユーチューバーが動画をアップできないなら、やる意味がなくなります。また、アップした動画自体が逮捕の裏付けになります。他の私人逮捕系ユーチューバーへの見せしめとして効果的ですよ」と指摘する。
そもそも私人逮捕とは、やむをえず緊急的にするもので、条件があり、満たしていないと違法行為となる。
一つは現行犯、準現行犯であること(刑事訴訟法212条)。もう一つは軽い犯罪の場合、犯人の住居や氏名が明らかでなく、犯人が逃亡するおそれがあること(刑事訴訟法217条)。これらに該当せずに私人逮捕すると、逮捕・監禁罪となりえる。
「身柄拘束する逮捕という行為は、間違えると人権侵害になります。現行犯逮捕であれ、通常逮捕であれ、緊急逮捕であれ、警察でさえ安易に行使できません。一般人が私人逮捕をしても、条件を満たしていないとか、事実誤認や証拠不十分、証拠捏造など、公判を維持できないことが多いのです。警察としては、再生数稼ぎの炎上商法に業務を妨害されています」(同)
私人逮捕という行為は簡単なものではないというのだ。何となく怪しいので私人逮捕したという程度では、罪に問えないどころか、逆に逮捕した方が逮捕・監禁罪、もしくは暴行罪になりかねない。
例えば、痴漢した人を取り押さえようとした際、近くの通行人にぶつかって転倒させてしまうかもしれない。そもそも見間違いで誤認逮捕してしまうかもしれない。
私人逮捕系ユーチューバーを放置していたら、再生数稼ぎのために過激化することも懸念されている。それを防ぐための見せしめ逮捕となりそうだ。