〈独自〉仕事の自由度低い人ほど男性更年期障害に 厚労省が初調査 データ収集へ

中高年男性の心身に影響を与える男性更年期障害を巡り、治療の経過と仕事への影響などを把握するため、厚生労働省の研究班がウェブ問診システムを開発し、初の実態調査に乗り出すことが16日、分かった。詳細なデータを分析し、男性更年期障害と仕事との両立支援に役立つ、産業医向けのガイドラインの作成を目指すとしている。
男性更年期障害は、男性ホルモンのテストステロンが加齢やストレスなどが原因で急減することで発症する疾患。倦怠(けんたい)感などの身体的症状に加え、意欲低下やイライラ、抑うつなど精神症状もあり、仕事との両立が困難になるケースもある。
厚労省の研究班は、昨年度から3年間の計画で、男女の更年期症状の特徴や治療の状況、仕事への影響度合いなどを調査している。
この中で、男性更年期障害は、順天堂大学大学院の堀江重郎教授らが担当した。これまでに、順天堂医院泌尿器科に通院する患者約300人や、企業などで働く男性約3500人を対象に、症状や受診の割合などを調べてきた。
その結果、仕事における意思決定の自由度が低い人ほどテストステロン値が低く、男性更年期障害になりやすい傾向にあることが新たに分かった。
研究班は従来の問診項目に、職場における意思決定の自由度に関する質問も加えた問診システムを開発した。
年明けから、日本メンズヘルス医学会に属する泌尿器科医の協力を得て、患者の治療内容や症状の経過、職場における生産性の変化についてデータを集める。
堀江教授は「この研究は国が男性更年期障害について実態を把握する初めての機会。男性が長く生き生きと働ける職場作りに役立つ指針につなげたい」と話している。
働く女性の健康、実態調査も
一方、月経痛などの女性特有の健康問題をめぐっては、別の研究班が、働く女性の実態を把握するため約5千人規模の調査を始めている。
調査の対象は、重い月経痛などの月経困難症と40代後半ごろから表れやすい女性の更年期障害だ。
この研究班の代表を務める産業医科大の立石清一郎教授によると、さまざまな職種の女性にアンケートして日常生活に支障が出るこれらの症状に悩む人の割合を調べ、仕事への影響や生産性の変化を分析する。
労働安全衛生法によって、事業主に実施を義務づける健康診断の項目には、女性特有の疾患に関する問診や調査は含まれていない。厚労省は調査結果を基に見直しを進める方針だ。