名古屋市中区錦3の漫画喫茶で昨年5月、愛知県尾張旭市の銀行員、大竹智之さん(当時35歳)を刺殺したなどとして殺人や殺人未遂などの罪に問われた住所不定、無職、稲田府見洋(ふみひろ)被告(23)の裁判員裁判は2日、名古屋地裁(神田大助裁判長)で遺族の意見陳述などがあり、大竹さんの姉は「かけがえのない家族を奪われた。生きている彼をただ返してほしい」と訴えた。
証人尋問では、父親が「智之はまじめで家族思いだった」と振り返った。仕事ぶりも評価され新規海外支店の責任者として活躍が期待されていたという。謝罪や被害弁償は一切無いが「今更謝ってほしいとは思わない。極刑にしてもらい、あの世で智之に謝ってほしい」と望んだ。
当時、第2子を妊娠中だった大竹さんの妻は検察官を通じ「主人は誕生を楽しみにしていた。生まれた子は主人にそっくりで涙が止まらなかった」と意見陳述。現在4歳の長男は「パパを捜しに行こう」と話すといい、「子連れのパパを見ると胸が締め付けられる。被告にどうか厳しい罰を」と訴えた。
終始うつむいて聞いていた稲田被告は被告人質問で弁護人以外の質問には一切答えず、神田裁判長は「黙秘権はあるが、あなたの生の声を聞いて判断したかった」と述べた。
起訴状によると、稲田被告は昨年5月17日夜、漫画喫茶内で、面識のない大竹さんを果物ナイフで複数回刺して殺害し、現場に駆け付けた県警中署の男性警察官にもナイフを振り下ろして殺害しようとしたとしている。【川瀬慎一朗】