大きさ2ナノメートル(ナノは10億分の1)の分子の歯車2個をかみ合わせて連動させ、その様子を観測することに、奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)のゲナエル・ラッペン教授らでつくる日仏米の研究チームが世界で初めて成功した。医療分野などへの応用が期待される「分子機械」の実用化に向けた成果という。
研究成果は英・ネイチャーコミュニケーションズ誌のオンライン版に掲載された。
分子歯車は、5本足の台と3枚羽根のプロペラを、ベアリング(軸受け)の役目を果たす金属イオンでくっつけている。
実験では、マイナス270度前後の極低温下に置いて停止させた、分子歯車2個を並べた。極細の針で刺激を与えて一方のプロペラ部分を回転させたところ、もう一方も逆方向に回り出し、プロペラ同士がかみ合って運動が伝わったことが確かめられた。
実験にあたり、回転方向が逆の2種類の歯車を作る技術を確立。先端を分子サイズにした針を使ってナノレベルの物体を自在に動かす特殊な顕微鏡を使用したという。
分子機械に詳しい東京工業大の金原(きんばら)数(かずし)教授は「複数の部品が連動して動くギアのような仕組みは機械に不可欠。ナノサイズの領域で分子が連動して動くシステムを構築し、さらに実証した点で画期的な成果だ」と話している。【大川泰弘】