九州北部大雨 3人死亡 30日夕にかけて厳重な警戒を

記録的な大雨に見舞われている九州北部は29日も各地で断続的に雨が降った。佐賀県では同日朝、武雄市で浸水した民家から90代の女性が遺体で見つかった。一連の大雨では佐賀、福岡両県で3人が死亡、意識不明が1人、行方不明が1人となった。佐賀県大町町の順天堂病院では患者ら215人の救助ができず、孤立状態が続いている。九州北部では、30日朝にかけて非常に激しい雨が降る見込みで、気象庁は引き続き厳重な警戒を呼びかけている。
武雄市北方町志久で29日午前4時半ごろ、民家の1階でこの家に住む90代の女性が泥にまみれて倒れているのが見つかり、死亡が確認された。県警武雄署や県によると、住宅は浸水しており、女性は1階の居間に倒れていたという。地元住民らによると、女性は足腰が弱かったという。同署が身元確認を進めている。
28日に大雨特別警報が発表された佐賀、福岡両県では車ごと流されるなどで計2人が死亡しており、大雨による死者は3人になった。佐賀市で車内から救出された70代女性は意識不明の重体が続いている。武雄市では50代女性といまだ連絡が取れていない。
大町町の順天堂病院は周囲の冠水状態が解消せず、29日午前時点で患者ら215人の孤立が続いている。うち入院患者は110人いて寝たきりの人は96人。人工呼吸器などが必要な重症者は移送が困難で、海上自衛隊などが救援物資や医療関係者をボートで運び続けている。病院を取り囲む水には近くの鉄工所から流出した油が混じっており、海上自衛隊や国土交通省九州地方整備局などがオイルフェンスで油を除去した水を六角川へ排出するなど作業を進めている。
各地で激しい雨が断続的に降っており、26日午前0時の降り始めから29日午前10時までの総雨量は、長崎県平戸市625・5ミリ、佐賀県唐津市531・5ミリなど。北九州市八幡西区のJR折尾駅によると、午前6時45分ごろから雨水が構内に流れ込み、改札周辺が一時、数センチ冠水した。山口県下関市でも複数の民家が浸水したとの情報があり、市が確認を進めている。
交通網の乱れも続いている。JR九州は、博多と長崎を結ぶ特急の一部を始発から運休。普通列車も佐世保線や唐津線の一部区間で運転を見合わせた。高速バスも福岡と長崎を結ぶ一部の便が運休した。高速道路は、長崎道の武雄北方インターチェンジ(IC)―嬉野ICの下り線が大雨の影響で路面が隆起し、通行止めとなっている。
気象庁によると、対馬海峡にある前線が30日にかけて九州を南下するため、九州北部は大気が非常に不安定な状態が続く。30日正午までの24時間の予想雨量は多いところで、熊本県150ミリ、福岡、佐賀、長崎、大分県100ミリ。【杣谷健太、竹林静、池田美欧】