東京都八王子市で2021年4月、アパートの外階段の一部が崩れて住人女性が転落死した事故で、警視庁捜査1課は14日、施工した相模原市の建設会社「則武(のりたけ)地所」(破産)の会長を務め、実質的経営者だった男性(77)を業務上過失致死容疑で東京地検立川支部に書類送検した。
警視庁は、元会長が階段が崩落する危険性を認識しながら、点検や補修を指示しなかったことが事故を引き起こしたと判断した。
書類送検容疑は、八王子市南新町3の3階建て木造アパートで、外階段にある木製の踊り場の腐食を補修などせずに放置。21年4月17日午後2時20分ごろ、踊り場と2階の通路をつなぐ階段を崩落させ、住人の大手里美さん(当時58歳)を転落死させたとしている。
捜査関係者によると、元会長は任意聴取に容疑を認め、「他に施工中の物件があり、作業を優先した。資金繰りも厳しく、苦情が入ってから対応すればいいと思っていた」と供述しているという。踊り場は防腐措置が施されておらず、階段との接合部分の金具の溶接も不十分だったとされる。
事故前には19年9月以降、則武地所が施工した複数のアパートで「階段が腐食している」などの苦情が同社に十数件寄せられていた。20年7月には施工した相模原市の木造3階建てアパートで外階段が崩落し、住人男性がけがをする事故があった。従業員からも「一斉点検した方がいい」と指摘されていたという。
警視庁は、施工物件で事故が起きていたことから元会長は危険を予見できたと判断。踊り場を防腐措置していなかったことから安全対策を怠っていたとみている。
国土交通省は事故を受け、則武地所が施工に関わった東京都と神奈川県の2階建て以上の共同住宅214棟を調査。うち6棟で外階段に腐食や劣化が見つかり、仮設の柱を設置するなどの安全対策を取った。都や神奈川県などによると、改修などで安全が確認されたのは97棟にとどまるという。【岩崎歩、菅健吾、朝比奈由佳】