横須賀基地で6mのQRコード掲示、読み取ると採用情報のHPへ…なり手不足に海自が危機感

海上自衛隊は横須賀基地(神奈川県横須賀市)の庁舎の壁面に、近く巨大QRコードの掲示を始める。一般の人がスマートフォンなどで読み取ると、採用情報のホームページなどにつながる。自衛官の採用難が深刻さを増す中、活動に関心をもってもらい、なり手不足解消につなげたい考えだ。
QRコードは縦横6メートルで、第2潜水隊群の8階建て庁舎に掲示する。庁舎から約300メートル離れた対岸の人気観光地「ヴェルニー公園」(同市)を訪れた人たちにも一目でわかる大きさだ。QRコードからは、海自の採用情報や横須賀地方隊のホームページにつながり、募集職種や勤務地、待遇、イベントの日程などの最新の情報が見られる。
中国の海洋進出など安全保障環境が厳しさを増し、国内でも毎年災害が起きる中、自衛官の確保は喫緊の課題となっている。少子化や民間企業との獲得競争の激化もあり、陸自、空自を含めた自衛官は24万7000人の定員に対し、実際は常に約2万人下回る状況が続いている。
海自では2023年度、50歳代定年の「非任期制」の採用が1042人(充足率64%)、数年で退官して転職などする「任期制」は444人(同32%)にとどまった。防衛省関係者によると、海自では人員が足りずに定員未満で出港したり、別の船の所属の自衛官が任務にあたったりする艦もあるという。
政府は昨年末、給与や手当、勤務環境などの自衛官の処遇改善に向けた基本方針をまとめた。石破首相は1月の施政方針演説でも「自衛官が十分に充足されていないことは極めて深刻な課題だ」と述べ、自衛隊の人的基盤の強化に取り組む考えを示した。海自幹部は「人員確保は待ったなしの状況。現場レベルでも採用策に知恵を絞っていきたい」と話している。

長く女性の登用が見送られてきた潜水艦だが、約4年前に初めて女性の乗組員が誕生した。横須賀基地(横須賀市)を母港とする潜水艦「なるしお」(全長約82メートル、乗組員約70人)には、2人の実習生を含む5人の女性が任務にあたっている。
密閉空間で長期間の集団生活が求められることから、長年、女性の配置が見送られてきたが、防衛省が2018年に性別制限を撤廃。トイレやシャワーは共用だが、艦内に施錠できる女性用の居室を設けるなど、整備が進められた。
艦内では限られた人員で任務にあたるため、力仕事も男女平等。運航補佐を担う女性船務士(27)は「マンパワーに余裕のある他の配属先よりも、性差を感じる機会は少ないのでは」と語る。
家族や友人に何も告げずに出港し、数か月、連絡を絶って任務にあたることもある。女性船務士は「無事に帰還の報告をする時が一番、達成感を感じる。親とけんかしてもほどよい距離感を保て、デジタルデトックスにもなる」と笑う。乗組員同士の結束は固く、「家族のようだ」とも。
艦長の東垣洋介さん(46)は「ここで働く女性たちは仕事の細やかさや配慮にたけている人が多い。男女ともに乗組員の長所を最大限生かせる環境を作りたい」と話していた。(井美奈子)