「オマエはおいしそうだ」「裏切り者には死を」日本刀で脅して支配、自らを艦長と呼ばせ女性従業員に性的暴行を繰り返した66歳のペットショップオーナー〈懲役30年を求刑〉

「鬼畜」と呼ぶにふさわしい男の正体が明らかになった。福岡地裁で2月12日に開かれた公判に姿を現した男の名は、本多道雄被告(66)。この日に行なわれた論告求刑公判では、2021年までの4年間、自身が営むペットショップに勤務する20代から30代の女性従業員4人に繰り返し性的暴行を加えたなどとして、本多被告に検察側から懲役30年が求刑された。本多被告は「恐怖と暴力」で女性らを支配し、性暴力を振るっていたという。検察側が「他の性犯罪とは比較にならないほど悪質」と指弾したおぞましい犯行の実態とは。
〈画像〉動物たちには罪がないが…本多被告が経営していた店の“アイコン”となっていた愛らしい犬
日本刀を振り下ろすなどして恐怖心を植え付けた
「被告人から受けた性被害により、各被害者は被害から相当期間が経過した現時点でもなお、日常生活に支障が生じるほど苦しみ続けており、まさに魂の殺人といえる被害を被っており、被害結果も極めて重大だ」
福岡地裁で開かれた12日の公判で、検察官は本多被告が関わった一連の事件をこう総括した。公判で、「証人が述べるエピソードは作り話」「自由な意思で肉体関係にあった」などと主張し、無罪を訴え続けた本多被告を「不合理な弁解に終始しており反省の態度は皆無」と断じた上で求めた量刑は「懲役30年」。有期刑としては最長の量刑を求めた点からも事件の悪質性、特異性が浮かび上がる。
福岡県内などで3つのペットショップを運営する会社のオーナーだった本多被告。SNSでは動物を愛でる様子を投稿するなど、柔和な印象をアピールしていた一方で、長期間にわたって支配下に置いていた女性従業員らに対して執拗な性的暴行を重ねていた。
「本多被告が犯行に及んだのは、おもに糸島市内の自宅。『糸島勤務』と称して女性従業員を呼び寄せ、炊事洗濯などの身の回りの世話をさせつつ、性暴力を振るっていました。従業員らには自身を『艦長』と呼ばせて『絶対服従』を誓わせる誓約書まで書かせ、男性の部下に対しては怒鳴りつけたり、時には理不尽な理由で暴力をふるうこともあったと言います。普段から暴力団との関係をにおわせ、自宅に所持していた日本刀を従業員の目の前で振り下ろすなどして恐怖心を植え付けることで抵抗できないようにしていました」(社会部記者)
5年間で計6人に性暴力を…
公判記録によると、「艦長」こと本多被告による犯行は長期間に及んでおり、起訴された範囲だけでも、2017 年から2022 年までの約5年間で計6人が被害にあったとみられている。
昨年10 月には、「裏切り者は殺す」などと威嚇しながら日本刀を振り下ろしたり、女性に「おまえはおいしそうだ」「おまえの匂いに勃つ」などと暴言を吐きながらわいせつ行為に及んだとして、起訴された事件の一部で有罪判決が出ていた。
まさに暴虐の限りを尽くしていた本多被告だが、悪行はさらに長きにわたり継続的に行なわれていた疑いもある。
「初公判での検察側冒頭陳述では、本多被告が犯行をエスカレートさせた『きっかけ』として2012年5月ごろに店に届いた手紙の存在が示されました。匿名で届いたその手紙には、本多被告の『性的行為や支配行為を厳しく非難する』内容が書かれていたそうです。
手紙には、すでに従業員に自身のことを『艦長』と呼ばせて服従させていたことが書かれている。つまり、本多被告はこの頃からすでに現在、裁判にかけられているのと同じような犯行を重ねていた疑いがあるということです。今回立件されなかった事件や、さらに多くの被害者が存在する可能性があります」(同)
検察側の冒頭陳述によると、本多被告は2012年に発覚したこの匿名での告発を「519事件」と呼び、恐怖支配をさらに強めていったという。女性従業員に対して「絶対服従する」「艦長からの電話や呼び出しには最優先で対応する」などといった誓約書を書かせたりしたのもこの頃からだ。法廷では、本多被告が被害者を追い込んでいく犯行の状況も詳らかにされている。
冒頭陳述で示された記録によると、本多被告は2022年2月深夜、ペットショップの店長や従業員ら複数に「すぐに来い」と電話で招集をかけた。
午前5時前、糸島市の自宅に駆けつけた従業員一人の顔面をいきなり拳で殴りつけ、集まった従業員らを玄関前の地面に正座させた。そして、「携帯電話の電源を切って目の前に置け」と激高。「裏切り者がいる」「今日はそいつを見つけ出して殺す」と畳みかけた。
「ここじゃ斬ったときに血しぶきがするから並べ」
そして、「多数所持する武器類」から、日本刀を持ちだし、店長らの前で鞘から抜いた抜き身をさらして何度も振り下ろしながら、こう言い放ったという。
「ここじゃ斬ったときに血しぶきがするから並べ」
「血を流せるように水を撒いておく」
「本多被告は従業員に指詰めを迫ったり、『殺し屋を返り討ちにした』と吹聴しながら、『服従しないなら殺す』と脅したりもしていた。あらゆる手段で恐怖心を植え付け、一種の洗脳のような状態にして従業員たちを支配下に置いていた。
さらに、性的暴行の被害にあった女性従業員とは一緒に風呂に入っている場面やキスをする様子なども撮影していた。こうした写真をほかの女性従業員に見せつけて『同じように言うことに従わなければいけない』と思わせていたようです。
公判では証拠としてこの写真を持ち出して被害者と『親密な関係にあった』と主張しており、性的行為を強要した事実を隠すための材料にしようとしていたフシもある。残忍さとともに狡猾さも際立っていると言えます」(前出の記者)
獣欲のおもむくままに無軌道な犯罪を繰り返した本多被告に司法はどんな裁きを下すのか。注目の判決は25日に言い渡される。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班