茨城県龍ケ崎市の消防署で勤務時間中に倒れて死亡した男性救助隊員の遺族が、地方公務員災害補償基金に公務災害と認定しなかった処分の取り消しを求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。野口宣大裁判長は「死因と公務の間には相当因果関係がある」として、処分を取り消した。
高度救助隊の隊員だった宮本竜徳(たつのり)さん=当時(25)=は平成29年11月、訓練中に倒れ、亡くなった。死因は致死性不整脈。その後の解剖で、心筋症の基礎疾患があったことがわかった。
基金側は「死因は公務で引き起こされたものではない」として、公務災害と認めなかった。
野口裁判長は、宮本さんが25年4月以降、「アスリート並みの負荷を伴う訓練」を週3、4日で行っていたと指摘。基礎疾患がある中でこうした運動を続ければ死因が誘発される危険性は高く、死因と訓練に因果関係があったと結論づけた。
消防白書によれば、令和5年中に公務で死亡した消防職員は4人で、このうち1人が演習・訓練などが原因だった。
遺族側代理人は「泣き寝入りせざるをえない人もいる」と話す。基金は公務災害の認定基準として「発症前に通常業務に比べて特に過重な業務に従事したこと」などと定めているためだ。
宮本さんについても、基金側は「訓練は日常的に行われていた」などとし、公務災害にはあたらないと主張。ただ、判決は「認定基準は裁判所を拘束しない」として、訓練の運動強度と死因の関係を詳細に検討した。
宮本さんの父、洋治(ひろはる)さん(70)は「基金には現場の実態を把握し、不合理な認定基準を改定してほしい」と話した。