27日から九州北部に降った大雨で、福岡・筑後地域では男性1人が亡くなった他、相次いだ土砂崩れで生活道路が寸断されるなど大きな爪痕を残した。
八女市立花町山崎で28日午前、運転する軽乗用車が水路からあふれた水で流され、心肺停止の状態だった男性は、搬送先の病院で死亡が確認された。男性は近くの浜砂国男さん(84)で、死因は水死だった。現場近くに住む櫨川大史(はぜかわひろし)さん(28)は3階から水路の方を見ていたところ、水路にかかる橋に軽乗用車が向かっていた。大声で「来るな」と叫んだが、橋の中央で車が浮き、ガードレールが切れた部分から流されたという。
付近は水路も道路も田畑も区別がつかなくなっていた。流れもあった田畑の上を櫨川さんが泳いで車に向かうと、浜砂さんは後部座席のドアから脱出した。櫨川さんが「ロープを持って助けるから」と岸に泳ぎ始めると浜砂さんも続いたが、流れが速く途中で姿が見えなくなり、その後、車から数十メートルの場所で消防に発見された。現場の橋は以前も大雨で車が流されたことがあり、乗っていた人は脱出したという。
浜砂さんは近くの老人ホームで非常勤の相談役を務めていた。老人ホームの社長、甲木敏光さん(65)は「元区長で、地域と施設のつながりを大事にしていた。推測だが、大雨で見回りをしていたのかもしれない」と悔やんだ。近所の女性(79)も「地域活動に熱心でみんなに親切にしてくれた。信じられない」と話した。【高芝菜穂子】