静岡県の伊豆半島沖で平成29年6月、米海軍のイージス駆逐艦「フィッツジェラルド」とフィリピン船籍のコンテナ船が衝突し、乗組員の米兵10人が死傷した事故で、運輸安全委員会は29日、イージス艦側の見張りが不適切だったとする調査報告書を公表した。
事故は29年6月17日午前1時半ごろ発生。イージス艦と、コンテナ船「ACXクリスタル」が衝突、イージス艦居室部分に浸水するなどし乗組員7人が死亡、艦長ら3人も負傷した。
イージス艦では当直士官がレーダーや目視で周囲を監視。事故の約10分前、右前方のコンテナ船を目視で確認したが、近くの別の船に注意が向き、針路や速力を維持。レーダーの調整不足もあり近くにいる船を確認するのが困難になり、事故直前に左かじいっぱいの指示を出したが回避できなかった。
航行のルールでは、2隻の船が互いに針路を横切る場合、相手を右に見る船舶に回避義務があり、コンテナ船はこれに基づき、イージス艦が回避行動を取ると見込み、注意喚起のため信号灯を照射した。しかし、イージス艦側は気付かず、コンテナ船も針路や速力を変えなかった。
安全委はコンテナ船関係者から聞き取りを行ったが、イージス艦側へは直接調査できず、米海軍が公表した報告書などで調査結果をまとめた。担当者は「フィリピンを含めた3カ国の協力関係で調査でき、あまり支障はなかった」と述べた。海軍は事故後、人員配置や当直計画を見直した。
事故では下田海上保安部が30年、業務上過失致死傷などの疑いで双方の当直責任者を書類送検。静岡地検はいずれも不起訴処分にした。日米地位協定は公務中の犯罪は米側が1次裁判権を持つとしており、地検はこの規定に基づきイージス艦側の当直責任者を不起訴とした。