盗撮マニアを意味する「鳥師」を名乗るアカウントが交流サイト(SNS)上に乱立している。「撮(と)る」から派生したとみられる隠語で、アカウント内のほとんどの投稿が非公開。本人が承認したフォロワーのみが内容を閲覧できる。互いに鳥師を名乗ることで同じ性癖を持つ者であることを認証し合い、わいせつ動画・画像の共有ネットワークを形成している可能性もある。
摘発された「東海の鳥師」
「自分が撮影したものを同じ趣味の人に見せたり、評価されたりするのが快感だった」
商業施設や駅のエスカレーターで女性のスカート内の盗撮を繰り返した会社員の男(34)=三重県津市=はこう供述した。
地元や隣接の愛知県を犯行の舞台としていたことから、関係者の間では「東海の鳥師」と呼ばれていた。今年1月、大阪府警に性的姿態撮影処罰法違反(撮影・記録保管)容疑で逮捕され、その後起訴された。
府警によると、男は女子高校生の登下校が多いエリアを選び、スマートフォンをスカート内に差し入れる手口で盗撮していた。「5、6年前から始め、600~800回くらいやった」と説明、府警が押収した男のスマートフォンやパソコンからは計約300本の盗撮動画が見つかった。
246人のフォロワー
「パンチラ撮りまくりたい!」。男は自分が盗撮した動画をX(旧ツイッター)でフォロワーの愛好家たちと共有、ダイレクトメッセージでそんな歪んだ決意を語っていた。アカウントのプロフィル欄では、コピーした動画ではなく、自ら盗撮したもの=オリジナルを持っているという意味で「『オリ』あります」と強調。「仲良くなれば交換します」とも書かれていた。フォロワーの数は246人だったという。
大阪府警が、東海の鳥師を逮捕するに至った経緯も、この共有ネットワークにあった。府警が管内で摘発した盗撮犯の所持していた画像から、まず石川県内の男が浮上。その男が持っていた画像の入手経路をさらに調べたところ、東海の鳥師に行き着いた。
エスカレーター「ながら乗り」は厳禁
令和5年施行の性的姿態撮影処罰法では、盗撮だけでなく、盗撮記録の提供や保管といった行為も罰することができるようにした。だが府警幹部によると、立法措置による厳罰化の後も、盗撮は一向に下火になっていない。
防犯アドバイザーの京師美佳さん(53)は「スマホのような手軽な撮影ツールがあることで『盗撮』のハードルが下がっている」と話す。SNS上には女子高校生やキャビンアテンダントを専門にした鳥師もいるという。
ショッピングモールや駅での被害が多い理由はターゲットとなる通行人が多いから。「盗撮犯にとって『撮れ高』が多いから狙われやすい」。被害に遭わないために「エスカレーターに乗る際はスマホを操作しながらの『ながら乗り』をせず、周りの不審者に警戒してほしい」と呼びかけた。