都市計画法が禁じる無許可開発などの法令違反が次々と発覚していた札幌市南区の民間動物園「ノースサファリサッポロ」の運営会社が10日、「今年9月末までに閉園する」と表明した。156棟に上る園内の違法建築の全撤去を命じようとしていた市の幹部らは、閉園のスケジュールが示されたことに安堵(あんど)の表情を見せる一方、飼育中の動物の受け入れがスムーズに進むかを懸念する声も漏れた。
運営会社「サクセス観光」が「ノースサファリサッポロ閉園に関するお知らせ」と題する書面をホームページに掲載したのは、この日の昼頃のこと。書面では「法令上の問題」を閉園の理由に挙げた上で代表者の交代などを明かす一方、記載した以外の内容については報道各社の取材に応じないともつづられていた。
同社は2月18日、違法建築と認定された建物の撤去を2029年末までに完了するとの作業計画書を市に提出。だが、詳細な工程や飼育動物の移転先は記載されておらず、市が確認を求めても明確な回答がない状態が続いていたという。
この日の告知も市側には連絡が一切なく、「閉園へ」のニュース速報を見た市幹部らが確認に追われる事態に。ただ、幹部の一人は書面に「動物の移動と(建物の)撤去まで責任を持って実行する」と明記されていたことを歓迎し、「正直なところ、動物への責任を放棄するのではないかと心配していた」と打ち明けた。
一方、同社は動物の引受先や譲渡のスケジュールも明らかにしていない。一般的な動物園では、個体の血統管理や健康状態の把握を徹底しているが、市関係者によると、同園ではどのような取り扱いをしているかが判然としないという。旭山動物園(旭川市)の元園長・小菅正夫さん(76)は、「受け入れ先を見つけるのは容易ではない」とした上で「動物が安全に過ごせる場所を諦めずに探さないといけない」と指摘する。
園の近くに住む80歳代男性は「法令違反を重ねてきた運営会社には不信感がある。本当に閉園するかも監視していかないといけない」と話していた。