新型出生前診断、全染色体に拡大へ 臨床研究で計画、25年度にも

妊婦の血液から胎児の染色体の状態を調べる新型出生前診断(NIPT)で、日本医学会が認証する全国の大学病院など14施設の研究チームが、特定の染色体でダウン症候群など三つの病気を調べる現在の検査について、全ての染色体を対象に広げる臨床研究計画をまとめ、関係学会に伝えた。対象は、エコー(超音波)検査で胎児の体から病気が疑われたケースなど約2000人の妊婦で、2025年度にも研究を始める。
染色体は人体の設計図で、計23対46本ある。2本ずつが基本だが、本数が1本や3本になることや、染色体の一部が欠けたり重なったりすると、病気の原因になることがある。認証施設では、13、18、21番染色体の本数が3本になっているかどうかに限って18年から本格実施されている。
一方、美容外科など認証を受けていない施設では、全ての染色体の状態も調べるとうたう検査が広がっている。3項目以外の病気は現れる頻度がまれで検査の精度は確立しておらず、誤った検査結果で混乱が生じるケースがある。
研究計画によると、全ての染色体を対象に、染色体の数や、一定の大きさ以上の欠失や重複を調べる。全染色体を対象にしたNIPTの実施を視野に、検査の精度を保てるかや、染色体の変化と胎児の病気との関連を明らかにすることを目指す。
対象は妊娠10週以降で、エコー検査で胎児の形態の特徴から病気が疑われた人や、過去に染色体疾患の子を出産した人などに限る。結果は希望者に開示する。
研究計画は、日本産科婦人科学会など3学会の意見書を受けて変更される可能性がある。
研究グループの一人によると、検査項目の拡大で、多発奇形や知的障害、発達の遅れなどの症状につながる、染色体の変化が分かる可能性があるとする。
一方、染色体の変化が見つかっても、病気につながるかどうかは分からないケースも想定される。病気が現れる頻度はまれで、必要なデータが集められるかも課題だ。【寺町六花】