札幌市ススキノ地区のホテルで2023年7月、頭部を切断された男性(当時62歳)の遺体が見つかった事件を巡り、死体遺棄と死体損壊の各ほう助罪に問われた田村浩子被告(62)の公判が17日、札幌地裁(渡辺史朗裁判長)で結審した。娘の瑠奈(るな)被告(31)(殺人罪などで起訴、精神鑑定中)による男性の殺害や頭部の損壊を「極めて計画的かつ猟奇的な犯罪」とする検察側は、浩子被告についても「一部に加担した以上は厳しい処罰が必要だ」として懲役1年6月を求刑。これに対して弁護側は、全面無罪の判決を求めた。
検察側が浩子被告の罪だとしているのは、〈1〉娘が頭部を自宅に持ち帰った際に警察へ通報せず、夫で精神科医の修被告(61)とともに保管(遺棄)を容認した〈2〉娘に頭部を損壊する様子の動画撮影を求められ、修被告に依頼した――の2点。検察側は「これによって遺棄と損壊が容易になった」とし、弁護側は「浩子被告が保管を容認した事実はなく、撮影の依頼で損壊が容易になったとも言えない」などと反論してきた。
一方、両親が頭部の保管を継続させたり、修被告が動画を撮影したりしたことが遺棄や損壊のほう助罪に当たるかは、殺人ほう助罪を加えて起訴された修被告の裁判員裁判でも争点となり、渡辺裁判長は12日の判決で「遺棄と損壊のほう助罪が成立する」と判断。殺人ほう助罪の成立は否定しつつ、修被告を懲役1年4月、執行猶予4年(求刑・懲役10年)としている。
浩子被告の判決を事前に示唆するような内容だったため、弁護側はこの日の最終弁論でまず「修被告の判決には重大な事実誤認がある」と裁判官をけん制した。その上で、通報せずに保管を継続させた点は「こうした『不作為』を罰する規定は刑法にない」と指摘。修被告に動画撮影を代わってもらったことも「浩子被告は何を撮影するか分かっておらず、罪に問うことはできない」と強調した。
最終意見陳述に臨んだ浩子被告は、涙声で被害者と遺族に謝罪し、「生涯をかけ、夫とともに親としての責任を果たしていく」と語った。判決宣告は5月7日午後2時に指定された。