フジテレビ問題の第三者委員会は全394ページに及ぶ調査報告書で「フジの天皇」と政治権力の近さにも切り込んでいる。問題視したのはズバリ、安倍元首相の国葬だ。
2022年9月27日の国葬当日、フジは午前11時45分から午後3時45分まで特別番組を放送。実は当初、午後1時45分から2時間放送の予定だったのが、急きょ前倒し。4時間に拡大されたのだ。その背景について、現場の職員たちは「日枝久取締相談役(当時)の意向が働いた」と第三者委のヒアリングに証言している。
日枝氏は政界との距離が近く、特に安倍元首相とは蜜月の仲。安倍元首相の首相在任中は夏休みのたび、ゴルフコンペが恒例化していた。銃撃事件後、安倍元首相の遺体が自宅に運ばれた際、いち早く駆けつけたのも日枝氏だった。報道機関でもあるフジサンケイグループのトップとして、あり得ない行動だ。
しかも国葬の司会者は、フジの島田彩夏アナウンサー。見事なまでのお見送りに、当時はSNS上で「フジテレビ葬」と揶揄されたほど。国葬の賛否を巡り、世論が割れていただけに、現場からも報道の中立性を疑問視する声が上がったという。
社内アンケートで「役員が日枝氏の方ばかり見て行動」が半数超え
報告書には「現場の意向を無視して、トップダウンにより放送時間の変更が行われ、編成権の侵害だった」と社内の意見が記してある。第三者委は「内部統制・コーポレートガバナンス上の問題がある」と考え、さらに踏み込んだ調査を実施。当時の報道局報道センター室長、番組編成を統括する編成制作局長、そして宮内正喜・代表取締役会長から事情を聴いた。
結果、放送枠拡大を決めたのは宮内氏、当時の大多亮専務(編成制作担当)、小林毅専務(報道担当)の3人と判明。しかし日枝氏の指示や関与、放送内容への過度な圧力を認める証言を得られなかったことから、第三者委は「編成権の侵害という事態までは至っていない」と結論付けた。
ただ、第三者委への情報提供には「報道の独立性が守らなければならないにもかかわらず、経営側からの要請が多すぎる」との意見があり、社内アンケートの回答は「役員が日枝氏の方ばかり見て行動している」が半数を超えた。フジの天皇への忖度が横行していたのは間違いない。
日枝氏退任後、フジは政権ベッタリの印象を払拭できるのか。現場の奮起を期待したい。
◇ ◇ ◇
元タレントの中居正広氏(52)の元フジテレビ女性アナウンサーとのトラブルに伴うフジの一連の問題を巡って、女性アナの上司にあたる佐々木恭子アナ(52)の現状に注目が集まっている。●関連記事【もっと読む】『“3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは』で詳報している。