吉村知事に喫煙所不足直訴し自ら開設 大阪市路上喫煙禁止に格闘家・朝倉未来氏が「参戦」

2025年大阪・関西万博の開幕を1週間後に控える大阪市内で、民間団体が独自に公衆喫煙所を開設する動きが続いている。1月から市内全域で路上喫煙が禁止となり、今月1日からは大阪府の条例で飲食店内の禁煙も厳格化され、繁華街では喫煙所が不足しているとの声が上がる。指定喫煙所の整備を進めてきた市は今年度は喫煙状況の検証期間としているため、民間の取り組みに期待が集まるが、維持管理費用の負担が課題となっている。
YouTubeでの対談きっかけ
総合格闘家の朝倉未来氏が代表を務めるインターネット配信映像制作会社「MA」(東京)は1日、多くの飲食店が並ぶ大阪市北区の繁華街「お初天神通り商店街」内の商業ビル2階に公衆喫煙所「SMOKING DOWN」を開設した。広さは約17平方メートルで灰皿を4台設置。原則年中無休で午前10時から翌午前1時まで利用できる。
同社によると、開設のきっかけは昨年9月、動画共有サイト「ユーチューブ」で公開された朝倉氏と大阪府の吉村洋文知事との対談だった。
朝倉氏は、市内の繁華街で清掃活動をした際、路上にたばこの吸い殻が大量に捨てられており、路上喫煙者との会話で「喫煙所が少ない」との声があったことを吉村氏に直訴した。朝倉氏が主催する格闘技大会の初の地方大会が7月に大阪で開催される縁もあり、地域貢献のため喫煙所を開設した。今後も複数カ所の設置を検討しているという。
朝倉氏はコメントで、路上喫煙を防ぐために喫煙マナー向上と合わせて喫煙所の必要性を訴え、「万博で世界中から人が来たときに『日本ってきれいだな』と感じてもらいたい」と強調。吉村氏も「多くの格闘技ファンがたばこマナーを守って大阪の街をきれいに楽しんでもらえたら」と感謝のコメントを寄せた。
飛田新地にも開設
一方、同市西成区の歓楽街「飛田新地」では飛田新地料理組合が利用客用の灰皿を設置していたが、市の条例改正で路上喫煙にあたることが分かり、万博開幕に合わせて駐車場2区画をつぶして喫煙所を整備した。
組合関係者は「周辺に公衆喫煙所が少なく、地域貢献のためにも開設を決めた。喫煙者にくつろいでもらい、分煙マナーの向上にも役立てたい」と話す。
両団体の喫煙所は独自の資金で開設・運営されているが、こうした公衆喫煙所の運営で課題となるのがコストだ。路上喫煙を禁止する自治体では公衆喫煙所の開設費用を補助するケースも多いが、内容には地域差がある。
のしかかる賃料負担
清掃や光熱費などに必要となる維持管理費用として、東京都千代田区が公衆喫煙所の運営者に年額288万円を上限に補助し、開設場所の賃料も全額補助する。
大阪市も民間の新設・改修に対する補助があり、公設などとあわせて350カ所を超える指定喫煙所の整備が進められてきたが、維持管理費用の補助は年額144万円と千代田区の半分で、賃料補助もなく運営者側の負担が大きい。
全国約150カ所の公衆喫煙所を運営する「コソド」(東京)は、大阪市の補助を活用して市内11カ所で開設・改修した公衆喫煙所を運営するが、賃料負担が重くのしかかっている。
山下悟郎代表取締役は「大阪のキタやミナミの繁華街にある喫煙所では賃料がとんでもなく上がり運営は大赤字。利用者の多い地域にこそ喫煙所を増やしたいが、市の補助を賃料にあてられず足踏みしている状態だ」と話している。(山本考志)