【永田町番外地】#20
夏の参院選で苦戦必至の自民党は2日、松山政司・参院幹事長が首相官邸に石破茂首相を訪ね、後半国会、食料品やガソリンなど高騰に悲鳴を上げる国民の生活支援策をきめ細かく実施するよう強く求めた。
石破首相が予算成立直後に、それまで前向きな姿勢を見せていた食料品などの消費税率の減税について、「税率引き下げは適当ではない」として前言を覆したことから、松山が危機感募る参院自民党の総意をくんでの直談判であった。
会談後、松山は記者団を前に「私の意向をしっかり受け止めてくれたと思う」と述べていたが、石破の腹の内は違っていた。
「首相は表向き真摯に耳を傾けていましたが、実のところ、参院選に向けて焦る自民党内のこうした声を半ば楽しんでいるようにも見えます」とは、ある首相官邸スタッフの談。
石破はまた、「参院選で負けそうだから、と言いながら、彼らを復権させろって言うのはね」と周辺に漏らし、冷ややかな笑みを浮かべたそうだ。
何のことかといえば、松山が前日の記者会見で、派閥裏金事件で役職停止、党員資格停止処分を受けた統一教会系旧安倍派幹部の西村康稔元経産相と萩生田光一元政調会長を念頭に「政策に精通し、閣僚など重要な役職を担っていた人もいる。しかるべきポストで国民のために汗をかいてもらうべきだ」と語り、3日の処分明け後の要職起用を求めていたからだ。
■旧安倍派幹部の西村康稔は“決意表明”
軌を一にしてこの前日、当の西村は、はやる気持ちを抑えきれず、石破降ろしの司令塔とも目される元首相の麻生太郎を訪ね、「安倍晋三元総理のご遺志を胸に、これまでの経験を生かし、襟を正して日本の国益、国民のために全力を尽くしたい」と、ポスト石破への意欲をあらわにしていた。
「麻生さんは石破の商品券問題が浮上してから、番記者たちを追い払い、議員会館の自室に反石破系議員を頻繁に呼び込んで接触を重ねています。参院選を前に倒閣に走る気満々ですよ」とは、全国紙記者。
もっとも、麻生も含め、彼らは先の衆院選で自民党を苦境に追い込んだ“咎人”だ。しかも、麻生は首相時代、旧民主党に政権を明け渡した“重罪”を犯している。
麻生政権下、石破が閣内にいながらにして麻生降ろしを画策したのは周知の事実。両者はそれ以来の犬猿の仲だが、ところ変わって今度は麻生が石破政権の足を引っ張る歪な自民党内政局である。
2025年度予算は紆余曲折を経て年度内成立したが、石破は憲政史上初の衆参両院での予算案修正に追い込まれて大恥をかいた。
実はその裏に麻生の存在があることは意外に知られていない。次回、説明したい。 (特命記者X)