性的少数者のカップルを「市パートナーシップ宣誓制度」で認める三重県伊賀市は4月から続き柄欄に「夫(未届)」、「妻(未届)」と表記する市独自の「住民票」となる証明書の発行を始めた。このほど、同性カップルが世帯全員の「住民票」発行を申請し、市は1人に「世帯主」、もう1人に「夫(未届)」と表記した「住民票」を交付。2人は「住民票」を手に「一歩前進」と話した。
2016年にパートナーシップ宣誓をして市からカップルと認められた嶋田全宏さん(49)と加納克典さん(45)は2日午前、市役所住民課窓口で、4月から市が改定した要綱に基づく証明書の交付申請をした。市は住民基本台帳法に基づく住民票の原本から市独自の「住民票」を作成、世帯主に加納さん、嶋田さんを「夫(未届)」と表記した2枚つづりの「住民票」を交付した。1部300円は同法の住民票発行と同額。下段の日付の上に「上記のとおり、伊賀市に登録があることを証明する」、市長名と公印の下に「本証明書は、住民基本台帳法に基づく住民票ではなく、伊賀市及び三重県のパートナーシップ・ファミリーシップ宣誓による続柄(つづきがら)を記載した証明です」と印刷されているところも、同法の住民票と異なる。
同法に基づく住民票だと、嶋田さんの続き柄欄は「同居人」となる。異性のカップルの場合は法律婚をしていなくても同法に基づく住民票で「夫(未届)」、「妻(未届)」の表記が可能。稲森稔尚市長はこの違いを「差別であり容認できない」と独自の「住民票」を導入した。稲森市長は「夫、妻と公称することに意義がある」と強調した。
嶋田さんは「将来は法律婚できればいい。大きな一歩です」と話し、加納さんは「これを発行してもらえる市で暮らすことに安心感がある」と語った。
市によると、独自の「住民票」発行の前提になる市パートナーシップ宣誓制度で受領証を発行したカップルは13組で、現在10組が継続している。【大西康裕】