岡山・吉備中央町長「残念な判断」
ふるさと納税返礼品の調達費が国の基準を超えていたとして、総務省が吉備中央町の指定取り消しを発表したことを受け、山本雅則町長は13日、開会中の町議会定例会で、「町民や関係者の方々に申し訳ない」と陳謝した。歳入の一角を担い、農業振興の原資にもなっていただけに、町政や農家への影響が懸念される。(根本博行、井上学)
総務省によると、吉備中央町は2024年10月~25年3月、生産者に対して、米1俵(60キロ・グラム)あたり、買い取り費用約1万4000円に加えて、奨励金約1万1000円を支給し、合わせて計約2万5000円を支払った。これに対する寄付額は4万4000円。合計額は、返礼品の調達費用を寄付額の「3割以下」にするとする基準を超える約57%に上った。23年10月~24年9月も合計2万1000円で、割合は約47%だった。
同省は今年4月に町に報告を求めて以降、担当者を町に派遣するなどして調査を進めてきた。奨励金が、返礼品の米生産者に対してのみ支払われ、米の出荷量に額が決められていたことから、合計額が実質的な調達費だと判断した。町がこの期間に受け入れた寄付金は計約19億円だったという。
一方、町はこれまで、奨励金の目的が、米の調達ではなく、種子の更新、土壌改良などに充ててもらうためだと説明してきた。
山本町長はこの日の議会で「おいしいお米を作り、耕作放棄地にならないように頑張ろうとの意味を込めていた」と改めて強調。「違った見方で判断され、この結果になった。(奨励金の)制度には自信を持っており、全国の中山間地域で取り組んでもらえたら、国土保全にも大変役立つと思う」と語った。
町が今年度、ふるさと納税で見込んでいた寄付額は約20億円で、ほとんどは米が返礼品の寄付。そのうち、既に受け取った額を除く約11億円が指定取り消しで見込めなくなった。これまで主に農業振興に活用してきたといい、山本町長は議会後の記者会見で、「大変遺憾で残念な判断だった。影響は本当に大きい。(支援がなくなれば)ますます離農が増えていく。できるかぎり農業振興対策事業を継続できるよう知恵を絞りたい」と危機感をにじませた。
同町では田植えが終わり、水田にはふるさと納税の返礼品に充てられていたコシヒカリの苗が並ぶ。
当初から町に米を出してきた同町上竹の農業男性(73)は「奨励金は肥料代などに使わせてもらい、非常に助かっていた。奨励金があるから何とか農業を続けて来られたのに」と話していた。