5月19日、中国籍の男が東京都板橋区のTOEIC試験(英語能力試験)会場で別人に成りすまして受験しようとしたとして、建造物侵入の疑いで逮捕された。
「捕まったのは京都大学大学院生の王立坤容疑者(27)。『他人名義の身分証で試験会場の敷地に立ち入った』と容疑を認めた。身分証については『駅で面識のない中国人から預かった。(受験すれば)報酬がもらえるはずだった』と説明している。替え玉受験の可能性が高い」(社会部記者)
TOEIC試験が狙われた真の目的
王容疑者が逮捕された18日、容疑者と同一の住所を受験票に記載していた受験生が43人いた。更に別の日にも王容疑者は替え玉行為をしており、合計53人が同じ住所を記載していたと判明している。
「組織的に中国系業者が指南し、中国人を大量に試験会場に来させている。これは前例のない、外国業者が絡んだ集団でのカンニング事案です」(捜査関係者)
なぜTOEIC試験が狙われたのか。もちろん、世界中で就職や進学に有利に使えるだろうが、それだけではない。TOEIC主催者側の関係者が声を潜めて言う。
「真の目的の一つは、中国人留学生による、日本の大学への進学だと私たちはみています。外国人が日本国内で大学留学・大学院進学をする際に、TOEICなどの成績を提出する。特に難関大学では重要です」
取材班が中国系業者に潜入取材すると…
実際に中国のSNS上には、日本の大学合格までを謳う“不正受験”の勧誘投稿が氾濫している。
「週刊文春」取材班はこうした業者に中国人を装ってメッセージを送り、潜入取材を試みた。WeChat(中国版LINE)でやり取りを続けていると、業者から「メッセージでは詳しく教えられません。もし可能でしたら、対面相談に来てください」との申し出があった。
業者が指定したのは新宿区にあるマンションの一室。ドアの前には看板も表札も見当たらない。部屋の中から20代前半と思しき容姿端麗な中国人女性が姿を現し、こう語り始めるのだった。
「こちらはマンションの一室ですし、表にあるような大手の予備校とは一見違って見えるかもしれません。しかし、私たちは慎重にする必要があるんです。だって大学の“合格保証”に携わっていますから……」
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7月2日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および3日(木)発売の「週刊文春」では中国人による日本の名門大への不正受験の実態を4ページにわたって特集する。潜入取材で明らかになった不正受験の手口、業者が明かした「狙い目の大学」、中国人社長が直撃取材に明かした「業者の正体」などを詳しく報じる。また「電子版」では潜入取材時の音声も公開している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年7月10日号)