事業者によるポイント競争が過熱し、政府が10月からふるさと納税の仲介サイトでポイント付与を禁止することを受け、楽天グループは10日、ポイント付与を禁止する総務省告示の無効確認を求める行政訴訟を東京地方裁判所に提起した、と発表した。ポイント付与の禁止について、総務省は昨年6月に方針を公表し、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、オンラインで反対署名を集めるなど決定に猛反発していた。
総務省がポイント付与禁止に踏み切った背景には、運営事業者が自社サイトに利用者を集める目的で、寄付額の一定割合をポイントとして還元する競争の過熱がある。ポイントの原資に、寄付金の一部が使われている可能性があると指摘している。
楽天グループの百野研太郎副社長はこの日の記者会見で「(楽天は)日本を元気にすることで始めた会社。地方創生、地域創生に取り組んできた」と強調した。楽天は一律に全面禁止する必要性はなく、過剰に規制していると主張。国会での審議なく、告示で規制することは、総務相が持つ裁量権の範囲を逸脱し、憲法が定める「営業の自由」に反するとしている。
楽天は2015年からふるさと納税に参入。1708自治体が参加し、寄付者は約500万人に上るという。百野副社長は「ふるさと納税は日本のインフラになっている。国会で議論せずに、禁止するということ自体がおかしい。地方創生と言われている中で10年間、改善してきたし、(政府の意向に)コミットメントしてきた」と語った。
ポイント付与の禁止にあたり、楽天はネット通販とふるさと納税サイトで、システムを分離するなどの対応が必要になるという。
昨年、ポイント付与を禁止する総務省の決定を受け、三木谷氏は、X(旧ツイッター)で「小さな自治体が自助努力で財源を確保しようとして、一般の方が楽しみにしている、創意工夫、地方に恩返しという思いをぶっ潰そうとしている。断固反対する。傲慢すぎ」と猛反発。今年3月にはポイント禁止に反対する約300万人分の電子署名を石破茂首相に手渡した。
三木谷氏は参院選(20日投開票)比例代表に国民民主党から出馬している楽天社員について「『ふるさと納税ポイント付与禁止』に真っ向から反対しています。地方を元気にしてる『ふるさと納税ファン』の味方です」と投票を呼びかける熱の入れようだ。
ふるさと納税は、出身地やゆかりのある自治体に、感謝や応援の気持ちを表すために、税制優遇して寄付を促すのが本来の趣旨。ネット通販事業者が参入して以降、寄付額が増加する一方、〝官製通販〟といわれるほど本来の目的からかけ離れた、返礼品競争に陥っている。2023年度の寄付額は1兆1175億円で、通販サイトの運営事業者やコンサル事業者などに支払われた経費は約5000億円に上る。
ふるさと納税事業者として先駆者であるトラストバンク(東京都渋谷区)の親会社、チェンジホールディングスの2025年3月期連結決算では、売上高463億円のうち、ふるさと納税事業を含むパブリテック部門が261億円と約56%を占める。同部門の営業利益率はほぼ5割で、チェンジHDの営業利益の9割以上を占めている。
ふるさと納税は寄付額が巨大になったことで、仲介サイトの運営事業者に支払われる経費も膨らみ、〝中抜き〟批判が強まっている。楽天はふるさと納税に関する収益について明らかにしていない。楽天に限らず、運営事業者は納得感のある収益構造を公表し、収支の透明性を高めなければ、国民の理解は得られない。(高木克聡)