〈浜松ガールズバー2人刺殺〉「クソガキがなめやがって…」“刺青男”は鉄パイプで元同僚を殴って足を折り、通報しようとしたらナイフで恐喝…最近は借金、失職、ぼっちに

〈〈浜松ガールズバー2人刺殺〉元黒ギャングを名乗り「少年のとき事件おこしたんだけどよ~」とワル自慢をしていた“山ちゃん”投資詐欺にあいキレて「殺してやる」と包丁を研ぎだして… 〉から続く
静岡県浜松市のガールズバーで店長と従業員の2人を刺殺した容疑で無職の山下市郎容疑者(41)が現行犯逮捕された事件。「彼は弱い人間には“とことんやる”」。知人が語ったその言葉通り、山下容疑者は14年前にも後輩に対し、凄惨な暴力事件を起こしていたという。
〈画像〉腕に入ったイカツイ刺青をみせながらハイボールを飲む自称・“元黒ギャング”の山下容疑者
「僕の足めがけて鉄パイプをフルスイングしてきたんです」
静岡県浜松市のガールズバーで店長の竹内朋香さん(27)と同店従業員の伊藤凜さん(26)が「ククリナイフ」と呼ばれる特殊な刃物を持った男に刺殺された事件。現行犯逮捕されたのは、無職の山下市郎容疑者(41)。
#5では、山下容疑者が10代の頃“黒ギャング”に所属し強盗事件を起こしていたという証言や、20代の頃に投資詐欺に遭ったことに怒り狂い「殺してやる」と包丁を研いでいたといった証言を紹介した。
そんな山下容疑者について、
「本当に上の立場の人間には弱く、下には強いという人でした。カッとなると止まらないので亡くなった女の子たちは本当にかわいそうですが、あいつならやりかねないと思いました。自分が下だと思っている人からバカにされると異常なほど怒り狂うので、女の子たちに馬鹿にされたと思えばやりかねないなと……」
と語ったのは、容疑者が20代半ばの頃に塗装会社でともに働いていたという後輩の男性だ。
「山下が27歳とかそのくらいの年齢で、僕がまだ10代の頃の話になります。その頃、袋井市内の塗装会社に勤めていて、僕の先輩が山下でした。山下は“黒ギャング”に所属してその時代に一度パクられたこともあるワル。でも、地元で有名な不良っていうのとはちょっと違くて……。
同じワルからも、『あいつは狂ってるから』と、サイコパス扱いされているタイプで、孤立している感じでした。僕とか下に見ている人間には、自分のつけているアクセサリーを見せて『これたけーやつだぞ。すげえだろ』と自慢したり、執拗に電話で飲みに誘ったりしてくるのですが、電話に出ないととんでもない剣幕で『俺の電話に出ねえとかなめてんのか。この野郎』と怒鳴り散らす感じです」
さらにこの後輩の男性は、「実は、僕自身も山下容疑者に暴行を加えられています」と打ち明ける。
「ある朝、僕が寝坊してしまい慌てて職場に行くと山下が突然、僕の足めがけて鉄パイプをフルスイングしてきたんです。痛くて立っていられず病院に行くと、足が折れていることがわかり、2カ月間の松葉杖生活を余儀なくされました。
しかし、山下は謝りもしない。それどころか、会社からは騒ぎにしないでほしいと言われましたよ。山下は前社長の息子に拾われたとかで、そういった理由で守られたのかもしれませんが……」
「あんまなめてるとマジで…」ナイフを突きつけられ恐喝
納得のいかない男性は山下容疑者に対し、「警察に全部話す」とほのめかしたのだという。
「すると、山下は『クソガキがなめやがって。近くのコンビニにいるから来い』と。こちらも引くつもりはないので、指定されたコンビニまで行きましたが、山下に近寄ったところで彼がナイフを持っていることに気づきました。それもよくある小型のナイフとかではなく、刀剣というか若干湾曲した刃の長い特殊なナイフでした。
山下は『あんまなめてるとマジで殺すぞ』と僕にナイフを向けてきて……。さすがに恐ろしくて、『警察に言うのはやめる』と言うと、逆にお金を請求されました。給料が入るたびに月々10万円をとられるようになったんです。
『お前、俺と一緒に来い』とやたらと連れ回されるようになり、2回に1回くらいの割合で、持ってきたナイフを向けられたりもしました。さすがに耐えられず、山下より立場が上の人に間に入ってもらったら、それっきり僕には近寄ってこなくなりました」
逮捕時は無職だった山下容疑者。だがその職歴をたどると、塗装業、運送業、そしてまた塗装業などを転々する生活だったようだ。社会人になってから山下容疑者と知り合ったという知人は、彼の意外な一面を語る。
「知り合った頃の山下容疑者は、いわゆる強面の元反社とかそんな感じは一切なく、どちらかと言うとゲームが趣味で、内向的な性格に見えました。ゲームはドラゴンクエストが好きでしたよ。
見た目はあんな感じで強面ですが、言い方は悪いですが社会人デビューなのかなって思ったくらいですから。ただ、メンヘラ気質というか、承認欲求が強かったように思います。『会社にとって俺は必要ねえのかな』とかたまに言っていましたから」
この知人が山下容疑者と交流があったのは、1年前くらいまで。当時、山下容疑者は建設業で働いていたという。
「仕事自体は真面目にやっていましたし、本人も仕事のことや将来のことを考えている部分もあって、建設に関する国家資格をとったりもしていました。資格に関しては、詳細は伏せますが、何の勉強もせずにとれる資格ではありませんでしたから、努力はしていたと思います。
建設業の前は運送会社で働いていたのですが、そこは飲酒運転で捕まって退職していて、ちょうど1年前くらいは免許についても取り直しをしていましたね。お酒に関しては報道に出ている感じで飲み歩いていました。ファッションは好きで、洋服を買ったり、ナイキのエアフォ―スワンを収集したりしていた」
寂しい思いやお金のこと、仕事のことがチリのように積もっていって…
その一方で、山下容疑者は厳しい金銭事情を抱えていたようだ。
「山下容疑者はこの建設会社をクビになっているのですが、彼が辞めてから何社からも消費者金融から会社に電話がかかってきたそうです。彼と同じ職場で働いていた知人によると、今年になってからようやく、そういう電話がなくなったとか。山下容疑者が借金を払ったのか、新しいところで働きだしたのか、その後どうなったのかは知りません。
本人は『仕事を続けたい』と言っていましたが、ちょうどこの頃から私も疎遠になっていったので、結局その先、山下容疑者がどうしたのか、わからないんですよ」
結婚歴があり、子どももいたという山下容疑者。この知人は仲間でバーベキューをした時に、別の家族の子どもが山下容疑者になついていた姿が忘れられないという。
「本当によく遊ばせてやっていて、面倒見がいいって感じなんですよ。子ども好きだったんだと思います。確かにメンヘラ気質なところがあり、執着心は強かったかもしれないけれど、人を殺すとか、そんな風には思えない。
なんとなくではあるのですが、寂しい思いや、お金のこと、仕事のことがチリのように積もっていって、犯行に及んでしまったのかなって。私はそんな風に思います」(知人)
山下容疑者が今回の犯行に及んだ動機については、被害者2人のスマートフォンでのやり取りの内容に怒りを覚えたからとも伝えられている。
思い通りにならない生活の中、プライドを傷つけられたという理由で女性に暴力の矛先を向けたのだとしたら、あまりにも身勝手だ。何が彼を凶行に駆り立てたのか――。事件の真相解明が待たれる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班