環境省は19日、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う除染作業で発生した福島県内の除染土を再利用するため、東京・永田町の首相官邸に一部の放射性物質濃度が低い土を搬入した。前庭にある植栽の下地用で、県外での再利用は初めて。除染土は2045年3月までに県外で最終処分することが法律に定められており、政府が率先して受け入れることで国民の理解醸成を進める狙いがある。
除染土は原発事故後の除染作業で剥ぎ取った土。同県の大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設で6月末現在、約1411万立方メートル(東京ドーム約11杯分)が保管されている。
環境省がこの日トラックで搬入した土は約2立方メートルで、前庭の2メートル四方のスペースに高さ60センチで入れる。その上に通常の土を約20センチかぶせ、芝に似た植物「タマリュウ」を植える工事を20日までに終える。
同省によると、同施設にある除染土の4分の3は放射性セシウム濃度が1キロ・グラム当たり8000ベクレル以下で、近くで作業しても年間被曝(ひばく)線量が1ミリ・シーベルト以下になり、人体に影響がないとされる。この土について政府は各省庁の敷地や全国の公共工事などでも再利用を進める方針。今回官邸に搬入された土は同6400ベクレルだという。
一方、同8000ベクレルを超える4分の1は県外で最終処分することが決まっている。
政府は夏頃には今後5年程度の工程表を策定する。現時点で最終処分場の場所は決まっていない。