サウナやスーパー銭湯、スポーツクラブなどで備品の高級ドライヤーが盗まれる被害が発生している。持ち去り防止の対策をしていたにもかかわらず、電源ケーブルが切られて約20万円分が盗まれる事例も発生。ドライヤーの設置場所となる脱衣場には防犯カメラを設置しづらいことから、経営者は対策に苦慮している。
「ショックで言葉もありません」
6月5日、サウナ横綱本川越店(埼玉県川越市)が交流サイト(SNS)でドライヤーの窃盗被害にあったことを報告した。無残に切断された電源ケーブルの写真も添付されており、投稿を見た人からは「信じられない」と驚きの声が上がった。
同店によると、盗まれたのは海外メーカーのダイソン製ドライヤー3台で、1台6万円相当という。盗難防止のためにコンセントから抜けない仕掛けが施されていたが、ケーブルを切断して持ち去られた。さらに4日後のレディースデーには、営業開始からわずか1時間半ほどの間に2万円相当のヘアアイロン1台が盗まれた。被害額は計約20万円に上る。
オーナーの竹内太一さんは「高級ドライヤーはお客さまの満足のためにと思って設置したのに、盗まれてしまい残念。今は見回りを増やしているが、従業員の負担もあり限界がある」と苦しい胸の内を明かす。
近年、ドライヤーの高級化が進んでおり、昨年9月にはパナソニックが1台8万円を超える最上位機種を発売。シャープやダイソンなども競うように高価格帯のドライヤーを展開している。利用者サービスの一環として、サウナやスーパー銭湯、スポーツクラブの脱衣場のほか、ホテルなどにも設置されるようになったことで、窃盗被害が増えたとみられる。
住宅リフォームなどを請け負う「山喜住まいるホーム」(神奈川県厚木市)の吉田盛一社長は「2、3年前からドライヤーの窃盗対策の依頼が急に来るようになった」と明かす。
複数の銭湯やスポーツクラブから被害が発生しているとの相談を受け、ねじ止めした南京錠の掛け金部分に電源ケーブルを通すことで持ち去られないようにする対策を実施した。ただ、「翌日にねじを外してドライヤーが盗まれてしまった」(吉田氏)例もあったことから、現在は鍵付きコンセントカバーを設置するようにしている。
施工費は1カ所1万円程度だが、何カ所も行うことになれば施設側の負担は軽くない。また、ケーブルを切断されてしまえば持ち去りを防ぐのは難しくなる。
サウナ横綱の竹内さんは「プライバシーの観点から防犯カメラの設置は難しく、どうすればいいか悩んでいる。疲れを癒してリフレッシュしてもらうために頑張っているのに悔しい」と話した。(桑島浩任)