順天堂医院で胆管の内視鏡検査後に女性死亡、6300万円の賠償命令…「リスク説明なく」

順天堂大付属順天堂医院(東京都文京区)で2021年、胆管の内視鏡検査を受けた女性(当時72歳)が急死し、遺族が同院側と検査を担当した男性教授に約2億2000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は18日、計約6300万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。一場康宏裁判長は「検査の死亡リスクを教授から事前に説明されておらず、女性は緊急性が高くない検査を受けて死亡した」と述べた。
判決などによると、女性は20年12月、肝臓や胆管の状態を示す数値に変化が見られたため同院で診察を受けた。21年2月、教授による内視鏡検査を受けた直後に容体が急変し、2日後に死亡。死因は検査で引き起こされた「急性膵炎(すいえん)」とされた。
訴訟で教授側は「死亡するリスクは事前に説明していた」と主張したが、判決は教授と女性の面会時の録音記録などを基に、そうした説明はなかったと認定。教授が「検査は胃カメラのようなもの」と発言して女性や家族に検査の危険性を誤って理解させたとした上で、「リスクが適切に説明されていれば女性は検査を見送り、死亡という結果も招かなかった」と医院側の責任を認めた。
判決後、記者会見した女性の三女(50)は「医院側の対応を否定した判決に感謝している。医師の責任について社会全体で改めて問い直していただきたい」と話し、医院側に控訴しないよう求めた。同院は「主張が認められず残念だが、亡くなった患者様には心より哀悼の意を表する」などとするコメントを出した。
問題の検査を巡っては、国の医療事故調査制度に基づく指定機関「医療事故調査・支援センター」が昨年7月、「適切とは言い難い」とする報告書を同院と遺族に提示。遺族側は教授について業務上過失致死容疑での告訴状を警視庁に提出し、同12月に受理されている。