自民のYouTube戦略が失敗に終わった決定的要因

7月20日に投開票が行われた参議院選挙の結果については、おおむね「与党である自民党・公明党の敗北」と「国民民主党・参政党の躍進」と結論づけられることが多いように思う。なかでも、2024年の兵庫県知事選以降、知名度が高まった「SNS選挙」で党勢の拡大を加速させたのが、参政党だったのではないか。
一方で、参政党に負けず劣らず、SNS選挙への対策を強化した政党があった。改選前に比べて議席数を大きく減らした自民党だ。何が両党の明暗を分けたのか。動画関連のIT企業・エビリーのYouTubeデータ分析ツール「kamui tracker」を用いて、前後編に分けて検証してみたい。
後編:参院選で”再覚醒”したオールドメディアの選挙報道、「報道特集」の一件が示したリスクと可能性 (外部配信先ではハイパーリンクや画像がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンラインでご覧ください)
昨年の衆院選から視聴回数は倍増
まずは、今回の参院選の選挙期間中、YouTube上で視聴された動画のうち、タイトルに「参議院」もしくは「選挙」が入っているものをピックアップし、数値の算出や分類を行った。これらの言葉が入ってないもので選挙に関連する動画もあるはずだが、際限がなくなってしまうので、限定した調査にした。
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具体的には、公示日2日前の7月1日から投開票日である20日までの選挙関連動画の視聴回数を日ごとに集計し、昨年秋の衆院選と対比してみた。衆院選は10月15日公示で投開票日が27日と、選挙戦の期間が今年の参院選より5日間短かったため、公示から13日目が最後となっている。

昨年の衆院選の投開票日(13日目)は累計9097万回だったが、今回の参院選で公示日から同じ日数が経過した7月15日は1億8551万回と、文字どおり倍増。その後、今回の参院選の投開票日には3億1948万回にまで膨らんだ。
昨年から浸透が進んでいたSNS選挙の傾向に拍車がかかっている。YouTubeが“選挙のインフラ”として定着したといえそうだ。
では、これらの動画は誰が投稿したものなのか。投稿者を「政党」「候補者」「マスメディア(テレビ局、新聞社など)」「一般ユーザー」に分類し、投開票日までの累計視聴回数の内訳を出してみた。

なんと一般ユーザーが7割近くを占めている。選挙関連動画の膨大な視聴回数は、政党でもマスメディアでもなく、一般ユーザーが投稿した動画によるものが多かったわけだ。
「一般ユーザー」に支えられた参政党のYouTube