石破首相(自民党総裁)が先の参院選で惨敗した責任を取っていないとして、自民党内で「石破降ろし」の動きが広がっている。責任を追及するための両院議員総会の開催を求める署名活動などが党内で進んでおり、地方組織の反発も収まる気配がない。(阿部雄太、三沢大樹)
「民主主義だから色んな意見があっていい」
首相は24日、参院選で当選した自民の鈴木宗男氏と首相官邸で面会した際、そう述べた。鈴木氏によると、党内からの批判を気にしないそぶりを見せ、選挙結果については「厳粛な審判をしっかりと受け止めたい」と語ったという。
首相は惨敗の責任を取って退陣の意向を固めたものの、今後の政治日程などを見据えながら表明の時期を模索している。この日、別の面会者には「地位にこだわるのは主義ではない」と述べ、「居座り」批判には不満ものぞかせた。
ただ、党内の石破包囲網は日に日に狭まっている。22日に始まった両院議員総会の開催を求める署名活動は、旧茂木派に加え、旧安倍派、麻生派へ賛同者が広がった。
両院議員総会は党則が定める正規の議決機関で、開催により首相への圧力を強める狙いがある。所属国会議員の3分の1の要求で招集でき、中堅議員の一人は「数が集まらなければ石破政権容認のメッセージになりかねない」と強調する。
党内では、総裁選の前倒し実施を求める署名活動も始まっている。首相と距離を置く議員は「さっさと退陣しないなら総裁選前倒しで退場だ」とけん制する。
退陣を求める意見書や声明などを出す地方組織も増えており、奈良県連は24日、「役員各位の英断をもって党の刷新を」との意見書を党に提出したと発表した。
首相は23日、麻生太郎、菅義偉両元首相、岸田文雄前首相と党本部で面会した。会談後、首相は記者団に「私の進退については、一切、話は出ていない」と強調したが、実際には首相経験者らから進退で苦言を呈されていたことが分かった。
関係者によると、「参院選の総括をせねばならない」と話す首相に対し、岸田氏が「検証も大事だが、今後の道筋を示さないといけない」と要求。麻生氏も「石破自民党では選挙に勝てない。自分で対応を考えた方がいい」と突きつけた。3氏からは「党が割れないようにしなければいけない」との声も上がり、出席者の一人は24日、「最も危機感がないのが首相本人だ」とこぼした。
退陣後を見据えて「ポスト石破」候補たちの動きも活発になっている。昨年の総裁選に出馬した高市早苗・前経済安全保障相は24日、旧安倍派幹部の西村康稔・元経済産業相と国会内で面会し、茂木敏充・前幹事長も同日、東京都内の飲食店で旧茂木派の若手議員と会合を開いた。旧安倍派では、幹部だった松野博一・前官房長官ら4人が23日、東京都内で集まり、情勢を分析した。