佐賀県伊万里市の住宅で26日に親子が男に襲われた強盗殺人事件で、警察はベトナム国籍の男を逮捕し、28日午後、送検しました。閑静な住宅街で起きた凶行。一体なぜ、親子が狙われたのでしょうか。
事件が発生したのは26日夕方です。
■平山翼記者
「佐賀県伊万里市の住宅街です。今は規制線が張られていて中に入ることはできませんが、この道の先に事件があった現場があるとみられます。」
26日午後4時半ごろ、伊万里市東山代町の民家に男が押し入り、住人の椋本舞子さん(40)と70代の母親をナイフで切りつけ、逃走しました。
閑静な住宅街で突然起きた凄惨(せいさん)な事件。現場には、痛ましい痕跡も残っていました。
椋本さんは、首や腹を刺され、玄関で血を流して倒れていて、その場で死亡が確認されました。死因は失血死でした。70代の母親も首などを切りつけられましたが、命に別条はありません。
男は逃げた母親を外まで追いかけてきたといいます。
■通報した人
「椋本さんの母親がケガされて私のところに逃げてきたから、私が隣の人に協力を求めた。それからしばらくしたら、犯人の男がのぞいていた。(隣の人が)走って追いかけたから、(犯人が)逃げたか隠れたか分からない。」
近所に住む女性は、母親の応急処置に当たりました。
■近所の人
「近所の方の声があまりにもただ事じゃない、どうしたと思って行ったら、手で首を押さえて血だらけになっていた。とにかく娘さんのことを心配されていたんですよ。舞子、舞子が中におるって。怖いというよりも、娘さんのことが精いっぱいやったですよね。」
「何でこういうところで事件が起きたかなって。夜もろくに眠れないです。」
「小さい子どもが多いところですので、早く捕まってほしいですね。」
亡くなった椋本さんは、中国の大学で日本語の講師として働いていました。近所の人は、休暇で実家に帰っていて被害にあったのではと話しています。
去年10月に椋本さんと中国で知り合って仲良くなったという、人形作家の清水真理さん。通訳の仕事をお願いすることもあったといいます。
■椋本舞子さんの友人・清水真理さん
「(椋本さんは)どこの国の人とも友人になれるような人柄でした。きのうは感情の整理がつかなくて、人がいないと泣いてしまう状況だったのですが、本当に偉大な損失というのが本音で、女性で単身で、中国に溶け込んで、しっかり仕事をされていた。」
勤務先の中国の大学の関係者は。
■椋本さんの勤務先・景徳鎮陶資大学の職員
「いま、事実確認中です。」
そして、28日未明。
■伊万里警察署・平川博幸 署長
「先ほど、伊万里市内居住の男、24歳を逮捕しました。」
強盗殺人などの疑いで逮捕されたのは、伊万里市東山代町のベトナム国籍の技能実習生、ダム・ズイ・カン容疑者(24)です。
警察によりますと、カン容疑者は椋本さんの自宅のインターホンを鳴らし、母親がドアを開けるとナイフを突きつけ「財布を見せろ」などと脅しました。
椋本さんが現金1万円を渡すとさらに金を要求し、1000円を強奪。その上、家の中に押し入ろうとして、椋本さんに抵抗されナイフで切りつけたということです。椋本さんの自宅内では、土足で物色した形跡も確認されたといいます。
カン容疑者は警察の調べに対し、「何も話したくありません」と容疑を否認しています。
■森野里奈記者
「こちらがカン容疑者が住んでいた寮です。この寮から奥に進むと坂があり、その先が現場となった民家で、歩いて1分ほどの距離です。」
勤め先の食品加工工場が用意した寮に、複数の技能実習生と一緒に住んでいたというカン容疑者。
■近所の人
「(Q.寮には何人くらい住んでいた?)5・6人いたんじゃないですかね。(Q.事件のあとは?)いつもだったら上から下から電気をつけっぱなしで、にぎやか。でも電気は消えているし、住んでいるのかなと思うくらい。ただ、人の話し声は聞こえている。」
工場の関係者は、カン容疑者についてFBSの取材に対し「これまでにトラブルはなかった」としています。
一体なぜ、犯人は椋本さん親子を狙ったのか-。椋本さんの母親は犯人の男と面識はないと話していますが、椋本さんとカン容疑者の間に面識があったかどうかは分かっていません。
警察は、カン容疑者の動機について調べるとともに、椋本さんの母親に対する強盗殺人未遂の疑いについても捜査する方針です。