浜松市の歓楽街──7月6日の深夜、酔客らの楽しげな声のなか、突如として女性たちの悲鳴が響いた。山下市郎容疑者(41)が行きつけのガールズバー店員・竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)を刺殺した壮絶な事件は、世間に衝撃を与えた。
犯行は殺傷能力の高い“ククリナイフ”によって行われ、遺体には致命傷となる刺し傷がいくつも確認されていた。強烈な殺意が顕在化したかのような犯行態様だった。
7月下旬、NEWSポストセブンが改めて現地を訪れたところ、新たな防犯カメラ映像を入手。犯行直前から事件が起こるまでの生々しい一部始終が捉えられていた。
事件当日の0時54分を過ぎたころ、キャップを後ろ向きに被った容疑者がカメラを横切った。隣にピッタリと並んで歩いているのは、ワンピース姿の伊藤さんだ。一見、凶器のナイフのようなものは見当たらないが、男の右手には何かが携えられている。テレビ局報道部記者が話す。
「男は犯行時、両手に“ククリナイフ”を持って2人を襲った。防犯カメラ映像などを確認する限り、店に向かう道中はタオルのような布でナイフを覆い隠していたようです」
この場面から約1分後、「やめて、なんで!」「ぎゃあー!!」という叫び声が響き渡った直後、「警察、警察!」と必死に助けを求める人の声も確認できた。この間、5分も経っておらず、犯行は文字どおり“一瞬の出来事”だったことがよくわかる。
警察が発表した情報などによれば「伊藤さんは男と事件の2日ほど前から行動をともにしており、音信不通だった」という。今回の取材では、この時期より前に容疑者がある“不審な行動”をしていたことを示す証言も得られた。
浜松市千歳町にあるフィリピンパブの従業員が語る。
事件前の“不可解行動”
「あのガールズバーの近くにうちの系列があるんですけど、容疑者が事件の3日前の21時くらいに、ツレの男と歩いていたっていうんですよ。駐車場に車を入れて、周りの様子を窺っていたっていうの。うちの店員は、はじめ『俺らの店に因縁でもあるのか』と思って、怖いから様子を見ていた。いま思い返すと、うちの系列店じゃなくてそのさらに奥にあるあのガールズバーを見ていたんじゃないかという話になってね……。寒気がしちゃった」
目的は不明だが、しばらくの間バーの周りをうろついていたという山下容疑者。この従業員がさらに続ける。
「ちなみに、その前の日も1人で街をうろついていたよ。俺がキャッチで声をかけたから間違いない。ヤツは目立つからさ、忘れないよ。見た目もニュースのまま、タトゥーにサングラス、キャップという感じでさ。『フィリピンどうですか!』と声かけたら手であしらわれて、そのままあのガールズバーの方に向かっていった。もしかしたら、数日前から犯行の“下見”していたんじゃないかと思ってね……。