依存性ない強力鎮痛薬、京都大チームが候補発見…28年の実用化目指す

がん患者の激しい痛みを抑えられる強力な鎮痛薬候補を見つけたと、京都大のチームが発表した。こうした用途には現在、フェンタニルなどが使われているが、強い依存性が課題になっている。新薬候補に依存性はみられないといい、早ければ2028年の実用化を目指す。論文が5日、国際科学誌に掲載される。
鎮痛薬は、軽い痛みに用いられるアスピリンなどの「非オピオイド」と、フェンタニルやモルヒネなど強力な効果がある「オピオイド」の二つに分けられる。
しかし、フェンタニルには呼吸困難や強い依存性などの副作用があり、米国では不正に入手して乱用する人が相次ぎ、23年には8万人以上が亡くなった。
京大の萩原正敏特任教授と豊本雅靖特定准教授らは、痛みを抑える作用があるノルアドレナリンという神経伝達物質に注目。この物質の分泌量を増やす効果がある化合物をデータベースの中から見つけ、「アドリアナ」と名付けた。この化合物をマウスやサルに投与すると、オピオイドに匹敵する鎮痛効果が確認された上に、依存性や呼吸困難は認められなかった。
さらに、京大病院で肺がん手術後の患者20人を対象にした治験も行い、有望な結果が得られたという。萩原特任教授は「実用化されれば、医療現場でのオピオイド使用の削減に大きく貢献できる」と話す。チームは来年にも米国で数百人規模の臨床試験を開始する予定だ。
津田誠・九州大教授(神経薬理学)の話「難治性の慢性的な痛みにも有効性を示せば、幅広く使用される可能性がある」