名古屋城復元のバリアフリー対策巡り、市長が差別発言を謝罪…「生まれながらにして不平等があって平等」

名古屋城天守閣の木造復元計画のバリアフリー対策を巡り、名古屋市主催の市民討論会で差別発言があった問題で、広沢一郎市長は8日、市障害者施策推進協議会で「人権尊重、障害者差別解消を先導すべき行政としては決してあってはならない問題。当事者や多くの方々の心を傷付け、深くおわび申し上げる」と障害者団体代表らに謝罪した。
この問題は2023年6月、車いすの男性が、上層階まで垂直昇降設備を設置するよう求めたのに対し、別の参加者が「生まれながらにして不平等があって平等」などと主張し、差別用語まで使った。出席した河村たかし前市長は「熱いトークもあって良かった」と発言。その後、不適切だったとして謝罪したが、復元計画は今も停止している。
市役所で開かれた8日の会合には、障害者団体代表の委員ら約90人が出席。広沢市長は冒頭に謝罪し、市の担当者が、復元計画全体の総括や差別発言の再発防止策などを説明した。
意見交換の場で、委員からは、河村氏が「昇降設備を設置しない」と表明していたことが、障害者差別を助長したと批判。「謝罪だけではなく、市が先頭に立って差別をなくす方法を取ってほしい」と要望した。
別の委員は「総括では(復元計画と)障害者との対立構造のようになっている」と懸念し、「一人一人が当事者意識を持ち、社会全体でバリアフリーを推進してほしい」と求めた。また、バリアフリー対策だけでなく、石垣の問題など復元計画に関する正確な情報発信が必要との意見も出た。
広沢市長は「貴重なご意見をいただいた。皆さまと一緒に作り上げていくというつもりで、これから取り組んでいきたい」と述べた。
市は今後の木造復元計画について、障害者団体の理解を得て、議会と市民にも説明した上で事業を再開させる方針だが、「丁寧に進める」として明確な時期は示していない。