自民党旧安倍派の政治資金規正法違反事件で、同派から受け取った1952万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、東京地検特捜部は15日、萩生田光一・元党政調会長(61)の政策秘書を同法違反で東京簡裁に略式起訴したと発表した。同簡裁は同日、罰金30万円、公民権停止3年の略式命令を出した。
略式起訴されたのは牛久保敏文・政策秘書(46)。特捜部は複数回にわたって不起訴(起訴猶予)としてきたが、検察審査会の「起訴相当」議決を踏まえて判断を一転させた。一連の事件で検審の議決を受けて刑事責任を追及するのは初めて。
萩生田氏が代表を務める政党支部を巡っては、2018~22年、同派から受け取った政治資金パーティーの収入計2728万円を収支報告書に記載していなかったことが判明。特捜部が昨年5月、会計実務を担っていた牛久保秘書が不記載に関与したと認定する一方、不記載額が多額とは言えないとして起訴猶予とした。
その後、東京第5検察審査会による「不起訴不当」の議決や大学教授からの告発を受けて特捜部が再捜査し、同12月、再び起訴猶予とした。これに対し、同検審が今年6月、「起訴猶予にし続ければ虚偽記載はなくならない」と起訴相当を議決。特捜部が改めて捜査し、公訴時効(5年)にかからない20~22年分の不記載1952万円について立件した。
萩生田氏については、特捜部が不起訴(嫌疑不十分)とし、検審も「不起訴相当」と議決して捜査が終結している。
一連の事件で特捜部は、不記載額が3000万円未満の場合、他の罪と合わせて略式起訴したケースを除いて立件を見送ってきた。今回、2000万円を下回る金額で略式起訴したことについて、特捜部は「検審の議決を踏まえて判断した」としている。
萩生田氏は15日、X(旧ツイッター)に「政策秘書の略式起訴を厳粛に受け止めており、深くおわび申し上げる」と投稿。牛久保秘書の辞職の申し出を受理したとした上で、「政治資金の取り扱いの適正化に万全を期すことを誓う。今後も自らの職責を全うし、信頼回復に努める」とした。