クマや森の保護に取り組む「日本熊森協会」がサイバー攻撃でアカウントを乗っ取られ、同アカウントから会員らに「破産手続きを開始した」という内容の偽メールが送信されていたことが19日、分かった。同協会はSNSで被害を公表。不正アクセスは11日ごろに認知したといい、「悪質な脅迫メール」として警察などに相談しているという。
同協会はインスタグラムの公式アカウントで「一部の会員の方から『爆破予告など脅迫的な内容を含む不審なメールが届いた』とのご報告をいただいております」と投稿。「これらのメールは当会とは一切関係がございません。社会不安をあおることを目的とした悪質な脅迫メールとみられます」と強調した。
同協会によると、11日ごろ、サイバー攻撃を受け、ウェブサイトを管理するサーバーにアクセスができなくなったという。公式サイトは現在も表示できない状態が続いている。
メールを送信する同協会のアカウントも乗っ取られており、弁護士の名前をかたって、「破産手続きを開始した」などとする偽メールも送信されているという。
同協会は7月下旬、「SNS上において『クマが射殺されると本部から会員に抗議するよう連絡がある』『抗議マニュアルが添付されている』といった虚偽の情報が流布されています」と声明を発信。「誤った情報を信じた方からの苦情や抗議のご連絡が多数寄せられており、その対応に長時間を要し、実務にも支障が出ております」と訴えていた。
人に危害を加えたクマの駆除を巡っては、駆除を実施した自治体に非難が殺到し、社会問題化している。一方で、クマをはじめとする野生鳥獣の保護団体にも激しい苦情が寄せられ、「誹謗中傷合戦」に陥っている。
クマによる人身被害が増加していることを受け、環境省は2024年に四国と九州以外の地域で、クマを計画的に捕獲して頭数を管理する指定管理鳥獣に追加した。都道府県はシカやイノシシと同様に捕獲や調査で国からの交付金を活用できるようになっている。
環境省によるとクマの駆除数は23年度が約9300頭。24年度は約5300頭で、今年度は6月末時点の暫定値で約1500頭となっている。シカやイノシシの駆除数は約120万頭を超えるが、クマの捕獲に対する苦情だけが突出している。(高木克聡)