首相候補は必然?「高市早苗の演説」が気になる訳

テレビ中継の画面越しに突き刺してくる視線。街頭演説では、腹から響く声が群衆を一瞬で黙らせる。派手な衣装も大げさなジェスチャーもない。それでも「この人なら最後まで貫く」と感じさせる──。
【写真】珍しい? 高市早苗議員の「ド派手なジャケット」と「説得力マシマシなファッション」
各メディアの世論調査で「次期首相に相応しい人物」のランキングに名を連ねる、自由民主党の高市早苗衆議院議員。その背景には、言葉を超えた存在感の強さがある。
これまで積み重ねてきた経験が政策論争での強さを支えているのと同時に、声や視線、服装、所作──この4つの要素も、彼女の“迫力”を支えているのは間違いない。
要所に差し込まれる「関西弁」の妙
高市氏の最大の武器は「声」である。国会や街頭で耳に残るのは、腹から響く低めの声だ。語尾まで力が落ちず、聞き手には「この人は揺るがない」という印象を残す。
興味深いのは、標準語で淡々と政策を論じつつ、要所で関西弁を差し込む点だ。緊張感ある論理に生活感のある響きが混ざることで、語りに独特のリズムが生まれる。聴衆は「説明」と「本音」の両方を行き来することになり、その緩急こそが説得力を高めている。
声の高さそのものも、非言語戦略の要素である。高い声は感情的に響きやすく、権威を弱めるリスクがある。一方、低い声は安定感や信頼感と結びつきやすい。
英国で女性初の首相となったマーガレット・サッチャーは、就任前に徹底したボイストレーニングを行い、声を低く鍛え直したことで知られている。女性が男性中心の政治の舞台で「首相」という地位を目指すとき、声は単なる個性ではなく、権威の象徴に変わるのだ。
高市氏もまた、もともと低めの声を持ち、それを抑揚や間の取り方で生かしている。自然体のまま説得力を伴う声質は、彼女が次期首相候補として存在感を放つうえで、大きな資産になっている。

あえて一点に集中する理由
討論や対談での高市氏は、視線をそらさず相手を見据える。さらに強調したい局面では、眼を見開き、一瞬静止する。
歌舞伎の「見得」のように、その瞬間が場を支配する。そこにはわずかな緊張感が漂い、見る者に静かな圧力を印象づけるのだ。
政治家の中には、聴衆全体に視線を散らして柔らかさや親近感を印象づけるタイプも少なくない。しかしそのスタイルは、対立局面では迫力や支配性に欠けることがある。
高市氏は演説の際には広く視線を配るものの、討論や対談では視線を一点に束ね、射抜くようなまなざしで、揺るがない意志や強固な立場を強烈に伝えている。